エギのチューニング|市販エギを「自分の釣り」に合わせる方法

市販のエギは「平均値」で作られています

エギは優れた工業製品ですが、すべての釣り場・すべての状況に完璧にフィットするわけではありません。

「もう少しゆっくり沈んでほしい」「もう少し飛距離がほしい」「藻場で根がかりを減らしたい」——こういう「あと少し」の調整を自分でやるのがエギのチューニングです。

この記事は連載の最終回で、ある程度エギングに慣れた方向けの内容です。エギングを始めたばかりの方は、まず市販のエギをそのまま使って基本を覚えてから読んでください。


チューニングの目的は3つだけ

エギのチューニングは複雑に見えますが、やっていることは以下の3つに集約されます。

① フォールスピードを遅くする(シンカーを削る・軽くする)

② フォールスピードを速くする(板オモリや糸オモリを追加する)

③ 根がかり・藻がかりを減らす(カンナの下半分を折る)

カラーやアクションの調整は別の話で、チューニングで変えるのは「沈む速さ」と「引っかかりやすさ」です。


① フォールスピードを遅くする:シンカーを削る

なぜ遅くしたいのか

浅場で釣るとき、ノーマルタイプのフォールスピードではすぐに底に着いてしまい、フォールで見せる時間が短くなります。シャロータイプを買えば解決しますが、好きなカラーにシャロータイプがない場合や、手持ちのエギを浅場仕様に変えたい場合にシンカーを削ります。

藻場の記事で書いた「藻の上を通す」釣りでも、フォールが遅いエギの方が藻に突っ込むリスクを減らせます。

やり方

カッターナイフと紙ヤスリ(400番程度)を使います。

エギのシンカー(顎の下のオモリ)をカッターで少しずつ削り、紙ヤスリで形を整えます。ポイントは「シンカー本来の形を崩さずに、縮小コピーするように削る」ことです。左右非対称に削るとフォールの姿勢が崩れます。

布を切らないように、シンカー周辺のボディにマスキングテープを貼ってから作業してください。

確認方法

浴槽やバケツに水を張って沈めてみます。削る前と削った後でフォールスピードがどのくらい変わったかを確認できます。一気に削りすぎると沈まなくなるので、少しずつ削って都度確認するのが安全です。

注意点

削りすぎると元に戻せません。市販のシャロータイプのフォールスピードを目安にして、それより遅くしすぎないようにしてください。また、削った分だけ飛距離は落ちます。


② フォールスピードを速くする:オモリを追加する

なぜ速くしたいのか

潮流が速い場所ではエギが流されてしまい、まともにフォールしません。深場を効率よく探りたいとき、ノーマルのフォールスピードでは着底に時間がかかりすぎます。風が強い日に飛距離を稼ぎたいときも、ウェイトの追加が有効です。

方法A:チューニングシンカー(市販品)

各メーカーからエギ専用のチューニングシンカーが販売されています。シンカー部分に被せるタイプ、スナップで取り付けるタイプなど種類があります。

メリットはエギのフォール姿勢を大きく崩さずにウェイトを追加できることです。使用するエギと同じメーカーのチューニングシンカーを選ぶと、形状がフィットしやすいです。

釣り場で付け外しができるので、状況に応じて現場で調整できるのが最大の利点です。

方法B:板オモリ

板状の薄いオモリをシンカーに貼り付ける方法です。厚さ0.5mmの板オモリで約3g程度のウェイトアップが可能です。

シンカーの形状に合わせてカットし、瞬間接着剤で貼り付けます。貼り付けた後は紙ヤスリで段差をならして水の抵抗を減らします。

板オモリのメリットは微調整がしやすいこと。ハサミで切ってサイズを変えられるので、「あと1g だけ重くしたい」という細かい調整に向いています。

方法C:糸オモリ

糸状のオモリをシンカーの根元に巻き付ける方法です。潮流が急に速くなったときに現場で対応できる即席チューニングです。

重めから始めて、実際にキャストしてカウントダウンしながら少しずつカットして軽くしていくのがコツです。

ウェイト追加の注意点

重くした分だけフォールが速くなり、イカがエギを観察する時間が短くなります。活性が低い状況では逆効果になることもあります。また重量が増すと根がかりも増えるので、海底の地形を把握した上でやってください。


③ カンナを折る:藻がかり・根がかり対策

なぜカンナを折るのか

エギのカンナ(後部の針)は放射状に広がっていますが、藻場の記事で触れたように、藻場では下側のカンナに海藻が引っかかりやすいです。

アオリイカがエギに抱きつくとき、カンナに引っかかるのは上半分に集中しています。下半分をカットしてもフッキング率はほとんど変わりません。

やり方

ペンチで下半分のカンナを根元から折ります。金属疲労を利用して、数回前後に曲げると折れます。ニッパーで切ることもできますが、切断面が鋭利になるので紙ヤスリで滑らかに仕上げてください。

切ったカンナの破片が飛ぶことがあるので、安全メガネをかけるか顔を離して作業してください。

効果

藻がかりが大幅に減ります。根がかりも減ります。今まで攻められなかった藻の濃いエリアを攻略できるようになります。フッキング率は体感でほとんど変わりません。


チューニングの前に確認すること

フォール姿勢を確認する

チューニングする前に、そのエギのフォール姿勢を確認しておいてください。水を張ったバケツや浴槽で、エギがどの角度で沈んでいくかを見ます。頭を少し下にした約45度の前傾姿勢が理想です。

チューニング後に同じ方法で確認し、姿勢が大きく変わっていないかチェックしてください。頭が真下を向いて沈むようならシンカーが重すぎ、水平に近い状態で沈むならシンカーが軽すぎです。

左右対称を守る

シンカーを削るときも、板オモリを貼るときも、左右対称が基本です。左右のバランスが崩れるとフォール中にエギが回転したり、ダートアクションが一方向に偏ったりします。


チューニングに向くエギ・向かないエギ

向くエギ:ミドルクラス以下の価格帯のエギ。失敗しても心理的ダメージが少ない。100均のエギでチューニングの練習をするのもありです。

向かないエギ:ハイエンドクラスのエギ。メーカーが精密にバランスを設計しているため、下手にいじるとバランスが崩れます。ハイエンドはそのまま使ってください。


現場で使える即席チューニング一覧

やりたいこと 方法 現場でできるか
フォールを遅くしたい シンカーを削る ✕(自宅作業)
フォールを速くしたい チューニングシンカー装着
フォールを速くしたい 糸オモリを巻く
微妙なウェイト調整 板オモリを貼る △(接着剤が必要)
藻がかりを減らしたい カンナ下半分を折る ○(ペンチがあれば)

葵ちゃん

葵ちゃんのまとめ

チューニングは「市販品に不満があるからいじる」のではなく、「この状況にもう少し合わせたい」という微調整です。

カラーローテーションがエギの「見え方」を状況に合わせる作業だとしたら、チューニングはエギの「動き方」を状況に合わせる作業です。どちらも「この状況に対してこのエギをどう合わせるか」という判断であり、道具と状況のマッチングそのものです。

ただし正直に言うと、チューニングが必要になる場面はそれほど多くありません。市販のエギのノーマル・シャロー・ディープの3タイプと、カラーローテーションで9割の状況は対応できます。残り1割の「あと少し」を埋めたいときに、この記事の内容を思い出してください。

最後にひとつ。チューニングで一番大事なのは「いじった後に必ず確認する」ことです。バケツでフォール姿勢を確認する、現場でカウントダウンを取り直す。確認しないチューニングはただの改悪になる可能性があります。

この連載はこれで最終回です。カラーローテーション、秋と春の違い、ナイトエギング、藻場の攻め方、そしてチューニング——全5回を通じて伝えたかったのは、エギングは「なぜそうするのか」を考える釣りだということです。読んでくださった方の釣行の、何かひとつでも判断材料になっていたら嬉しいです。

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本記事は釣具店での接客経験をもとにした解説です。チューニングによりエギのメーカー保証が適用されなくなる場合があります。カッターやペンチを使った作業では怪我に十分ご注意ください。