秋イカと春イカで何が変わるか|同じエギングでも釣りの組み立てが全然違います

「秋と春、どっちから始めればいいですか?」

エギングを始めたいお客さんからよく聞かれる質問です。答えは「秋から」です。理由はシンプルで、秋の方が釣れるからです。

ただし秋と春では、同じアオリイカを同じエギで狙っているのに、釣りの組み立てが根本的に変わります。エギのサイズ、狙う場所、誘い方、フォールのテンポ、必要な忍耐力——全部違います。

この記事では、秋イカと春イカで何がどう変わるかを整理します。


前提:アオリイカの一生を知っておく

アオリイカは一年で命を終える年魚です。この一年のサイクルを知っておくと、秋と春で釣りが変わる理由が分かります。

春(4〜6月):産卵のために大型の親イカが浅場に接岸します。藻場にまとわりつくように卵を産みつけます。

夏(7〜8月):卵が孵化し、小さなイカが生まれます。この時期はまだ釣りの対象になるサイズではありません。

秋(9〜11月):夏に生まれたイカが成長し、100g〜300g程度の「新子」として堤防や港内に群れで現れます。好奇心旺盛で、エギに積極的に反応します。

冬(12〜2月):水温低下とともに深場に移動し、岸からは狙いにくくなります。

つまり、秋に釣っている「新子」と春に釣っている「親イカ」は、同じ種類でも世代が違う魚です。新子は生まれて数ヶ月の子ども、親イカは産卵を控えた成体。サイズも性格も全く異なります。


秋イカ:数釣りの季節

特徴

秋の新子は好奇心旺盛で警戒心が薄いです。エギを見つけると積極的に追いかけてきます。足元まで追ってくることもあり、偏光サングラスがあればイカがエギに近づいていく様子を目視できます。

サイズはコロッケサイズ(100〜200g)からトンカツサイズ(300g前後)が中心です。11月に入ると500gを超える個体も混じります。

狙う場所

港内・堤防の足元・テトラ周り・藻場の周辺。新子は遊泳力が低く行動範囲が狭いため、身を隠せる障害物の近くにいます。沖を広く探るより、足元から丁寧に探る方が効率的です。

エギのサイズ

9〜10月は2.5〜3号が基本です。新子の体に対してエギが大きすぎると抱きにくくなります。11月以降はイカの成長に合わせて3〜3.5号にサイズアップします。

誘い方

テンポよくシャクって、手返しを重視します。新子は好奇心で反応するため、ダートアクションで興味を引いて短いフォールで抱かせるテンポの速い展開が有効です。

1か所で粘るよりポイントを次々と移動するランガンスタイルが向いています。いる場所にエギを通せば反応がすぐ出るので、3〜5投して反応がなければ移動、という判断で回転率を上げた方が数が伸びます。

サイトフィッシングが楽しめる

秋エギングの醍醐味は、イカが見えることです。偏光サングラスをかけて水中を見ると、エギを追いかけてくる新子の姿が見えます。イカがエギに近づいて触手を伸ばす瞬間は、エギングで一番興奮する場面のひとつです。


春イカ:大型の1杯を狙う季節

特徴

春の親イカは産卵のために接岸してきた成体で、1〜3kgの大型個体です。秋の新子とは比較にならないパワーがあります。

ただし非常に警戒心が強いです。秋の新子のようにエギを見つけたら即座に抱きつく、ということはほとんどありません。じっくり観察して、安全だと判断してから手を出す。それが春イカの性格です。

狙う場所

春イカは産卵場所を目指して回遊してきます。産卵場所はアマモやホンダワラといった海藻が繁茂する藻場の浅場です。

ただしポイントが限定的です。秋の新子はどの堤防にもいる可能性がありますが、春の親イカは産卵条件を満たす場所にしか来ません。潮通しの良い堤防の先端、外洋に面した磯、藻場が発達したエリアが狙い目です。

水温も重要で、冬に下がった水温が上がり始めたタイミングで接岸が始まります。水温16℃以上が目安とされています。

エギのサイズ

3.5号がメインです。大型イカに対してはエギの存在感が必要で、小さすぎるとアピール不足になります。深場を探る場面では4号を使うこともあります。

フォールスピードはノーマルかやや遅めが基本です。警戒心が強い春イカに対して速いフォールは違和感を与えやすいため、じっくり見せるスローなアプローチが有効です。

誘い方

秋とは正反対で、テンポを落としてじっくり攻めます。

シャクリは控えめに。大きくダートさせるよりも、軽いジャークで小さく動かしてフォールで見せる展開が中心です。着底後にエギを動かさずに底で待つ「ボトムステイ」も春の重要なテクニックです。

1か所に腰を据えて回遊を待つスタイルが基本です。秋のようにランガンしても、そもそも春イカがいるポイントが限られているため、移動しても見つからないことが多いです。「ここに来るはず」と読んだ場所で粘り続ける忍耐力が問われます。

釣れたときの重み

春イカが掛かったときの重量感は秋の新子とは次元が違います。ドラグが鳴り、ロッドが大きく曲がる。キロオーバーのアオリイカの引きは、エギングを続けるモチベーションになります。


秋と春の違いを整理する

項目 秋イカ 春イカ
ターゲット 新子(100〜500g) 親イカ(1〜3kg)
性格 好奇心旺盛・積極的 警戒心が強い・慎重
エギサイズ 2.5〜3号(秋終盤は3.5号) 3.5号(深場は4号)
狙う場所 港内・堤防足元・テトラ周り 藻場・潮通しの良い先端・磯
誘い方 テンポよくダート・手返し重視 スロー・ボトムステイ・じっくり
スタイル ランガン(移動しながら数を稼ぐ) 回遊待ち(1か所で粘る)
サイトフィッシング 有効(見えイカが多い) 限定的(深場にいることが多い)
難易度 入門向き 経験者向き

タックルは変える必要がありますか?

基本的なタックル(ロッド8.3〜8.6ft・ML〜M、リール2500〜C3000番、PE0.6〜0.8号)は秋も春も共通で使えます。

変えるとしたらリーダーの太さです。秋はフロロ1.5〜2号で十分ですが、春の大型イカは引きが強く藻に潜ろうとするため2〜3号にサイズアップするのが安心です。長さも秋の1m程度から春は1.5〜2mに延ばす方が、ボトムステイ時のリーダー擦れを防げます。


どちらから始めるか

迷ったら秋からです。

秋は釣れます。好奇心旺盛な新子がエギに積極的に反応してくれるため、「エギを投げる→シャクる→フォールで抱かせる」という基本動作を釣果とともに覚えられます。サイトフィッシングでイカの反応を見ながら学べるのも大きいです。

秋で基本を覚えてから春に臨むと、秋との違いが実感として分かります。「秋はあんなに簡単に抱いてきたのに、春は全然反応しない」——その壁にぶつかったときが、エギングのステップアップの始まりです。


葵ちゃん

葵ちゃんのまとめ

わたしがエギングを始めたのは秋でした。最初の釣行でコロッケサイズの新子が3杯釣れて、「エギングって簡単じゃん」と思いました。

翌年の春に同じ場所に行って、1杯も釣れませんでした。同じエギ、同じシャクり方なのに何もアタリがない。帰ってから調べて、春は場所選びも誘い方も全然違うということを知りました。

秋と春で「何が変わるか」を理解してからエギングが面白くなりました。秋は数を釣る楽しさ、春は読みを当てて1杯を獲る楽しさ。同じ釣りなのに全く違う面白さがあります。

秋に始めて、春に壁にぶつかって、そこから先は自分で考える釣りが始まります。

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本記事はアオリイカの生態に関する文献と、釣具店での接客経験をもとにした解説です。シーズンや水温の目安は関東エリアを基準にしています。地域によって1〜2ヶ月程度ずれることがあります。