その魚、天ぷらとフライどっちで揚げる?|釣り人のための揚げ物レコメンド
「キスは天ぷらでしょ」で思考が止まっていませんか
釣った魚を揚げて食べる。釣り人の食卓で最も多い調理法だと思います。
でも「キス=天ぷら」「アジ=フライ」で固定されている人が多い印象です。お客さんに「釣れたキスどうやって食べます?」と聞くと、9割が「天ぷら」と答えます。もちろん正解です。でもキスのフライも美味しいし、アジの天ぷらも悪くない。
天ぷらとフライは同じ「揚げ物」ですが、衣の厚さ・油の吸い方・素材の味の出方が全然違います。魚の特徴に合わせて使い分けると、同じ魚でも別の料理になります。
この記事では「どの魚をどっちで揚げるか」を整理します。唐揚げも含めて、堤防で釣れる魚の揚げ物レコメンドです。
まず3つの揚げ方の違いを整理します
天ぷら
小麦粉と卵と冷水で作った薄い衣をまとわせてサッと揚げる。衣が薄いため素材の味がダイレクトに出ます。油の吸い込みが少なく、仕上がりが軽い。
向いている魚:身が柔らかく繊細な白身魚。素材の甘みや香りを活かしたいとき。
フライ
小麦粉→卵→パン粉の3段階で厚めの衣をつけて揚げる。サクサクの衣と身のジューシーさのコントラストが楽しめます。ソースやタルタルとの相性が良く、ご飯のおかずとしてのパワーが高い。
向いている魚:身がしっかりしていて崩れにくい魚。青魚のように旨味が濃い魚。
唐揚げ
下味をつけて片栗粉や小麦粉をまぶして揚げる。衣が薄くて香ばしく、下味の自由度が高い。臭みが気になる魚や、小型の丸揚げに向いています。
向いている魚:臭みがある魚、骨ごと食べたい小型魚、弾力がある魚。
魚種別レコメンド
シロギス:天ぷら推し
キスの天ぷらは江戸前天ぷらの代表格で、これに関しては「天ぷら一択」と言い切ってもいいくらいです。
身が柔らかくて繊細な甘みがあり、薄い衣との相性が完璧。油温190℃で2分、衣と身を冷やしておいて温度差を大きくするのがカラッと揚がるコツです。塩で食べてください。
ただしキスのフライも実は美味しい。天ぷらより衣のサクサク感が強くなり、ふわふわの身とのコントラストが楽しめます。天ぷらに飽きたらフライを試す価値はあります。
ピンギス(小型)は天ぷらにすると衣の方が分厚くなってしまうので、唐揚げの方が向いています。低温でじっくり揚げれば骨まで食べられます。
アジ:フライ推し
アジフライは日本の食卓の鉄板です。三枚におろして中骨を抜き、パン粉をつけて揚げる。釣りたてのアジフライはスーパーの惣菜とは完全に別物です。
身がしっかりしていて油との相性が良く、青魚特有のコクがパン粉のサクサク感と合わさって、ソースでもタルタルでもご飯が進みます。
大型はフライ、小型(豆アジ)は唐揚げか南蛮漬けがサイズ別の使い分けです。豆アジは頭ごと丸揚げにすると骨まで食べられます。
アジの天ぷらもないわけではありません。料亭では上品な一品として出てきます。ただ家庭で食べるなら、フライの方がおかずとしての満足度が高いです。
メゴチ(ネズミゴチ):天ぷら推し
キス釣りの外道として嫌われがちですが、天ぷらにするとキスに劣らない味です。江戸前天ぷらの定番食材で、身が甘くてふっくら。
ぬるぬるの記事で書きましたが、ぬめりの処理だけちゃんとやってください。メゴチバサミで掴んで塩もみして、水で流してから捌く。下処理さえやれば、あとはキスと同じ要領で天ぷらにできます。
ハゼ:天ぷら推し
江戸前天ぷらのもうひとつの代表格です。秋の河口で数釣りしたハゼを天ぷらにするのは、東京湾の伝統的な楽しみ方です。
身が甘く、皮もパリッと揚がります。小型は丸揚げにすると骨まで食べられて栄養も豊富。大型は開いて揚げると身のふっくら感が楽しめます。塩で食べるのが一番です。
カサゴ:唐揚げ推し
根魚の代表格カサゴは、唐揚げが最も合います。身が締まっていて弾力があるため、唐揚げにすると外はカリッ、中はホクホクに仕上がります。
丸揚げにする場合は低温(160℃前後)でじっくり揚げてから、最後に高温(190℃)で仕上げる二度揚げが有効です。骨まで食べられます。トゲが鋭いのでキッチンバサミでヒレを落としてから調理してください。
天ぷらにしても美味しいですが、カサゴの身の弾力は唐揚げの方が引き立ちます。
イワシ:フライ推し
イワシフライは衣のサクサクと身のジューシーさが楽しめる定番メニューです。手開きで骨を取って、パン粉をつけて揚げるだけ。
鮮度が落ちやすい魚なので、釣ってすぐに処理することが大事です。サビキで数釣りできた日は、フライと南蛮漬けで大量消費できます。
唐揚げにして甘酢に漬ける南蛮漬けも、イワシの定番です。
アオリイカ:天ぷら推し(ただし注意あり)
イカの天ぷらは油がはねます。身の水分が加熱で蒸発するためです。
対策として、キッチンペーパーで水気をしっかり取る、衣をつける前に小麦粉をはたく、身に隠し包丁を入れて蒸気を逃がす。この3つをやればはねは減ります。
甘みが強いアオリイカは天ぷらとの相性が良く、塩とレモンで食べると最高です。フライにすると衣が厚すぎてイカの繊細な甘みが隠れてしまうので、天ぷらを推します。
マゴチ:天ぷら推し(全釣り人に食べてほしい)
夏のサーフで外道として釣れることがあるマゴチですが、食味は「外道」の域を完全に超えています。透明感のある白身は上品な甘みがあり、フグに匹敵すると言う人もいます。
天ぷらにすると、身がホクホクでありながら繊細な甘みが衣の中に閉じ込められて、これが本当に美味しい。薄い衣で素材を活かす天ぷらとの相性は抜群です。塩で食べてください。
フライにしても崩れにくい身質なので問題なく作れますが、マゴチの上品な甘みはパン粉の厚い衣で隠れてしまうのがもったいない。天ぷらか、薄衣の唐揚げが本領を発揮する食べ方です。
刺身も絶品ですが、1尾しか釣れなかった場合は半身を刺身、半身を天ぷらにするのが最高の贅沢です。
サバ:唐揚げ推し
サバは脂が多い青魚なので、天ぷらにすると衣が油を吸いすぎて重たくなります。フライも悪くないですが、サバの臭みが気になることがあります。
唐揚げにして醤油・生姜の下味をしっかりつけると、臭みが消えて香ばしさが前面に出ます。竜田揚げスタイルがおすすめです。
早見表
| 魚種 | 天ぷら | フライ | 唐揚げ | 一番のおすすめ |
|---|---|---|---|---|
| シロギス | ◎ | ○ | △(ピンギスは○) | 天ぷら |
| アジ | △ | ◎ | ○(豆アジ) | フライ |
| メゴチ | ◎ | △ | △ | 天ぷら |
| ハゼ | ◎ | △ | ○(小型丸揚げ) | 天ぷら |
| カサゴ | ○ | △ | ◎ | 唐揚げ |
| イワシ | △ | ◎ | ○ | フライ |
| アオリイカ | ◎ | △ | △ | 天ぷら |
| マゴチ | ◎ | ○ | ○ | 天ぷら |
| サバ | × | ○ | ◎ | 唐揚げ(竜田揚げ) |
迷ったときの判断基準
シンプルに3つの問いで決まります。
その魚は身が繊細ですか? → はい → 天ぷら(薄い衣で素材を活かす)
その魚は身がしっかりしていますか? → はい → フライ(厚い衣でボリュームを出す)
その魚は臭みがありますか? → はい → 唐揚げ(下味で臭みを消す)
同じ魚でもサイズで変わります。大型は天ぷらかフライ、小型は唐揚げで骨ごと食べる。サイズ別に揚げ方を変えるのが一番効率的です。

葵ちゃんのまとめ
本記事は一般的な調理知識と釣具店での接客経験をもとにした内容です。魚の鮮度・保存状態によって食中毒のリスクがあります。釣った魚は適切に保冷し、できるだけ早く処理・調理してください。
先輩がキスを釣ってくるたびに天ぷらにしていて、一度「フライにしてみたら」と言ったら「キスは天ぷらだろ」と返されました。そのくせメジナのバリエーションには困っている。固定観念を外すだけで食卓が変わりますよ、先輩。
わたしが一番好きな揚げ物はアオリイカの天ぷらです。自分で釣って、自分で捌いて、自分で揚げて、塩とレモンで食べる。油はねとの戦いですが、あの甘みは戦う価値があります。
「天ぷらとフライどっち?」で迷ったら、身が繊細なら天ぷら、身がしっかりしてたらフライ、臭みがあるなら唐揚げ。この3択を覚えておけば、どんな魚が釣れても迷いません。