イシモチが釣れたら|塩焼きにすると水っぽいあの魚をどう食べるか

「イシモチ、塩焼きにしたら水っぽくない?」

先輩から「イシモチ釣れた」と写真が送られてきました。20cmくらいの銀色の魚です。

濁りの入った日のシロギス狙いで、本命の代わりに現れるのがイシモチです。しかも釣れるときは連発する魚なので、気がつくとクーラーがイシモチで埋まっていることがあります。

「これ、塩焼きにしたら水っぽくない?」とわたし。

「うん、水っぽい」と先輩。

イシモチを釣ったことがある人なら、一度は経験する展開です。鮮魚店ではあまり見ない魚ですが、投げ釣りでは定番ゲスト。釣ったときの嬉しさと、塩焼きにしたときの「あれ?」のギャップが、イシモチの個性です。

この記事は、そんなイシモチを美味しく食べるための調理法の使い分けと、持ち帰りのコツをまとめます。


まずイシモチって何の魚か

イシモチは標準和名ではなく、ニベ科の魚を指す総称です。

デリッシュキッチンによると「体長40cm程度のスズキ目ニベ科シログチ属の海水魚の一種です。頭の中にあり耳のような働きをする器官の、耳石と呼ばれる部分が非常に大きいため『石持ち』が転じて『いしもち』と名付けられました」とのこと。

関東で「イシモチ」と呼ばれているのは、主にシログチニベの2種です。両方とも見た目が似ていますが、別の魚です。釣り人としては区別を知っておくと、料理の幅が広がります。

シログチ

  • 鰓蓋の上後部に黒い斑がある
  • 体長40cm程度が上限
  • 口の中が白っぽい
  • 体高がやや高い
  • 関東で「イシモチ」と呼ばれているのはほとんどコレ

ニベ

  • 鰓蓋に黒い斑がない
  • 体長70cm超に成長することもある
  • 体側に黒い小斑点が側線に沿って並ぶ
  • 体形がやや細長い

味の評価は、ニベの方がやや上とされています。サイズが大きい分、身に厚みが出るのも理由です。ただし投げ釣りで釣れるのは20〜30cmのシログチが圧倒的に多く、「イシモチ=シログチ」と思って間違いはありません。

地方名・通称・標準和名が混在している魚は、釣り人にとって混乱しがちです。イシモチも典型例です。


なぜ塩焼きにすると水っぽいのか

シログチが塩焼きで「水っぽい」と感じる理由は、身の水分含有量が他の白身魚より多いためです。

デリッシュキッチンでも「水分が多いいしもち」と紹介されています。

Honda釣り倶楽部では「イシモチはクセがなく美味しい魚だが、水分が多く時間が経つと身崩れしやすい」と記述されています。

特性として、

  • 身の水分含有量が多い
  • 身質が柔らかく、加熱で水分が放出されやすい
  • 鮮度が落ちると水っぽさが増す
  • 鱗が剥がれやすく、身崩れしやすい

このため、塩焼きにすると「ふっくら」を通り越して「水っぽい」と感じる人が多くなります。シログチを美味しく食べるには、この水分多めの特性に合わせた調理法を選ぶ必要があります。


鮮度命:持ち帰り方が9割

シログチで一番大事なのは、鮮度を保つ持ち帰り方です。

Honda釣り倶楽部で「水分が多く時間が経つと身崩れしやすい」と書かれている通り、鮮度が落ちる速度が早い魚です。

白身魚ですが、鮮度落ちのスピードはアジやサバなどの青物に近いと考えてください。釣ったらバケツに放置せず、すぐに下処理して冷やすのが鉄則です。

釣り場での血抜き(必須)

釣り上げたらすぐにエラまたはエラの付け根の膜を切って血を抜きます。心臓を突く方法は血が抜けきらないので、エラ切りが正解です。

血を抜くことで、

  • 生臭さを抑える
  • 身の劣化を遅らせる
  • 刺身用なら身の透明感を保つ

余裕があれば現地で内臓を取る

時間と場所に余裕があれば、釣り場で内臓まで処理してしまうとさらに鮮度を保てます。シログチは身の水分が多く、内臓周辺から傷み始める魚なので、内臓を早く取り出すことが鮮度維持に直結します。

ただし、

  • 釣り場で内臓を捨てるのは景観・衛生上のマナー違反
  • 取り出した内臓はビニール袋に入れて持ち帰り、自宅で処分
  • 釣り場のルール(内臓処理禁止のスポットもある)を必ず確認

「現地で内臓を出した方がいい」という先輩のアドバイスは、この鮮度管理の意味です。マナーを守って処理してください。

持ち帰り方

  1. 氷締めまたは活け締め:エラ切り後、すぐに氷の入ったクーラーへ
  2. 潮氷が理想:海水と氷を入れたクーラーに直行が一番鮮度が保てる
  3. ビニール袋に入れて氷の上:真水に直接触れさせない(身が水っぽくなる)

シログチの目利きは旬の魚介百科で「目に透明感があり澄んでいるかチェック。なるべく白目の部分が白いものが新鮮。鮮度が下がるにつれ黄色っぽくなってくる」と紹介されています。

釣ってから帰宅までの間、目の色が変わってきたら鮮度が落ちかけている合図です。


鮮度別の調理法ローテーション

シログチは鮮度によって最適な調理法が変わります。

当日(釣ってから数時間以内):刺身・皮霜造り

Honda釣り倶楽部では、シログチを刺身にする方法として「皮霜造り」が紹介されています。

イシモチはウロコを取って3枚におろし、腹骨をすいて背身と腹身の接合部に並ぶ血合骨を抜き取る。皮霜造りは少し傾けたまな板に皮目を上にして身を置き、手早く熱湯を注いで皮が白く変わって反ったら氷水に浸す。冷めたら水気をふき取って身が締まるように冷蔵庫で10分程度寝かせておく。

皮霜造りは、皮を残したまま熱湯で表面を引き締める処理。生のままより身が締まって、シログチの水分多めの特性が長所に変わります。「鶏わさ風ワサビ醤油和え」も同サイトで紹介されており、釣り人ならではの楽しみ方です。

翌日:煮付け

シログチの定番調理法です。クラシルで「やわらかく旨味たっぷりのイシモチは、めんつゆとみりんで甘辛く煮ると、ごはんのおかずにぴったり」と紹介されています。

デリッシュキッチンでも「ふっくらとした柔らかい身とこってりとした煮汁の味わいがご飯にはもちろん、お酒にもよく合います」と評価されています。

濃いめの味付けで煮ると、水分の多さが「ふっくら柔らかい煮魚」というプラスの特性に転換します。塩焼きで「水っぽい」と感じた人ほど、煮付けでイシモチを見直すことになります。

一夜干し:水っぽさを解決する切り札

シログチの水っぽさを解決する一番の方法が一夜干しです。塩を振って一晩置いて水分を抜くことで、旨味が凝縮されます。

韓国では「クルビ」と呼ばれる干物が高級品として扱われています。デリッシュキッチンでも「韓国でも食べられており、韓国語では『チョギ』と呼ばれ人気があります。干物は『クルビ』といい、高級品として知られています」と紹介されています。

家庭でも作れます。手順は、

  1. 背開きまたは腹開きにして内臓・エラを取る
  2. 中骨沿いの血合いを歯ブラシで取る(生臭さを防ぐ)
  3. 5〜10%の塩水に30分ほど浸ける
  4. 水気を拭いて、風通しの良い場所で半日〜一晩干す
  5. 表面が乾いて手触りがサラッとなったら完成

「網焼きで食べると本当に美味しい」と複数のソースで紹介されています。塩焼きで失敗するなら、ひと手間かけて一夜干しに変えるだけで別物の魚になります。

揚げ物・ムニエル:水分が多いからこそ向く

旬の魚介百科では「シログチは淡白な白身魚なので、油を使った料理に向いている」と紹介されています。

水分が多い身は、衣をつけて高温で揚げる調理と相性が良いです。衣の中で水分が蒸気となり、身がふっくら仕上がります。

揚げ物ガイドで書いた通り、油はね対策をしっかり取って挑んでください。

アクアパッツァ:洋風アレンジの定番

旬の魚介百科で「アクアパッツァ」が推奨されています。アサリ・トマト・オリーブオイル・ニンニクで蒸し煮にする調理法。

シログチの淡白な味とトマトの酸味、アサリの塩気が合わさって、家庭料理とは思えない一皿になります。鮮度が落ち始めた魚でも、ハーブとトマトでカバーできるのが洋風調理の強みです。

40尾以上釣れたとき限定:かまぼこ

シログチは高級かまぼこの原料として知られています。小田原かまぼこの素材として珍重されてきた魚で、すり身にすると弾力が強く出るのが特徴です。

釣り百科では「イシモチの身と卵白、塩、片栗粉少々をフードプロセッサーでよく混ぜ合わせてから、巻き簀にくるんで10分ほど蒸し上げて作る」と紹介されています。意外と家庭でも作れます。

ただし、必要な釣果が現実離れしています。

板かまぼこ1本(150g)に必要な魚肉は、すり身工程の水分・脂・血合い除去で元の重量の3〜4倍が目安。150g × 4倍 = 約600gの魚肉が必要です。

20cmのシログチ1尾の可食部はおおよそ30〜40g。

600g ÷ 35g = 約17尾

家族で板かまぼこ2本作るなら、34尾。盆暮れの来客用に3本作るなら、51尾

つまり、シログチでかまぼこを作るのは「40尾以上釣れた日」の選択肢です。30尾程度なら煮付け・一夜干し・刺身のローテーションで消費できますが、40尾を超えてくると「いっそかまぼこ作るか」が選択肢に入ってきます。

その日のために、覚えておく価値のあるレシピです。フードプロセッサーがあれば、釣り人だからこそ味わえる「自家製かまぼこ」が成立します。スーパーでは絶対に出会えない、釣り人の特権料理です。


葵ちゃん

葵ちゃんのまとめ

イシモチは投げ釣りで時々上がる、地味だけど扱いを覚えれば美味しい魚です。

塩焼きで「水っぽい」と思った経験は、シログチを釣ったことがある人の共通体験。だからといって美味しくない魚ではなく、調理法を変えれば化ける魚です。

新鮮なら皮霜造りの刺身、翌日は煮付け、量があれば一夜干し。鮮度別のローテーションが回せるようになると、イシモチを釣る日が少し楽しみになります。

韓国で高級品扱いされる「クルビ」を家庭で再現できるのも、釣り人の特権です。スーパーで買ったのでは、ここまで新鮮なシログチには出会えません。

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本記事のレシピと下処理手順は、Honda釣り倶楽部・クラシル・デリッシュキッチン・旬の魚介百科の各サイトを参考にしています。シログチは鮮度が落ちやすい魚です。釣ったら速やかにクーラーで冷却してください。