メゴチ34尾、キス1尾の日|江戸前天ぷら三大ネタを自分で揚げた話
先輩と並んで投げ釣りに行った日
ある日、先輩に「投げ釣り体験させてあげる」と誘われて、砂浜に並んで竿を出しました。投げ釣り未経験のわたしと、シロギス一筋の先輩です。
先輩は遠くに気持ちよく投げて、ぽつぽつとシロギスを釣り上げていきます。
わたしは3本針の仕掛けを近場に投げて、なんとか魚信を取ろうと一生懸命でした。最初の数投で、明確なアタリがありました。「シロギス!」と引き上げると、ぬめぬめした茶色い魚が3尾、連がけで上がってきました。
メゴチでした。
それから、ひたすらメゴチ。次の投入もメゴチ。その次もメゴチ。先輩は遠くで「型がいいから持ち帰れ」と声をかけてきます。
帰宅後にクーラーボックスを開けて数えたら、メゴチ34尾。キス1尾。
メゴチは投げ釣りの嫌われ者・第二弾
投げ釣りの外道シリーズ第二弾です。
舵オンラインでも「シロギス釣りをしていると、必ずといってもいいほど釣れる魚」と紹介されているメゴチ。釣り人にとっては「ちくしょー、メゴチかよー」と嘆く対象です。
メゴチが嫌われる理由は、
- 体全体がヌメリで覆われている
- ヌメリが手に付くと黄色っぽく染まる
- 仕掛けにヌメリが移り、次の投入で他の魚が掛かりにくくなる
- 鰓蓋に鋭いトゲがあり、素手で持つと刺さる
- 見た目が地味(茶色っぽく頭が大きい)
- 体長の割に身が薄い
ヒイラギと比べてもヌメリが強烈です。素手で掴んだら、手からロッドグリップまで全部ぬるぬるになりました。タオルで拭いてもなかなか取れません。
実は江戸前天ぷら三大ネタ
ところが、このメゴチ。実は江戸前天ぷら三大ネタの一角として知られる高級魚です。
築地の老舗・平八では「昨今では漁獲量も減り希少となったメゴチの、江戸前天ぷら三大ネタの一角たる、その味わい」と紹介されています。
正式な和名はネズミゴチで、釣り人が「メゴチ」と呼んでいるのは通称です。地域によっては「ネズッポ」「ゴチ」「ガッチョ」「テンコチ」など色々な名前で呼ばれています。
砂地の釣りでキスと一緒に上がってくる魚なので、釣り人にとっては身近な外道。でも飲食店では希少な高級ネタ。このギャップが面白いところです。
下処理:ヌメリを取る
メゴチの調理は下処理が9割です。ヒイラギ以上にヌメリが強いので、塩で揉むのは必須。
塩でヌメリを取る
- ボウルにメゴチを入れて、たっぷりの塩をまぶす
- 箸でかき混ぜる(素手は鰓のトゲで危険)
- 水で塩を洗い流す
- ヌメリが取れるまで2〜3回繰り返す
鰓のトゲに注意
捌くときに気をつけたいのが、鰓蓋の鋭いトゲです。
明石浦漁業協同組合のレシピでも「エラブタのあたりに鋭いトゲがあるので、捌く時に誤って刺されないように注意しましょう」と明記されています。
刺さると地味に痛いので、左手に軍手をはめるか、頭を落とすまでは魚体を直接握らないようにしてください。わたしは一度刺されました。
ダイワ・フィールドテスター直伝の捌き方(松葉おろし)
メゴチを持ち帰った日、先輩に「捌き方どうやるんですか」と聞いたら、こんな返事が来ました。
メゴチの方がキスよりおろすの簡単だよ。背鰭をピッと取って頭を皮一枚残して切って、そのままツルッと皮をむくんだよ
「……?」
その場では何のことか分かりませんでした。家に帰って調べたら、先輩が言っていたのは「松葉おろし」のことだったようです。動作で覚えている人に説明させると、ピッとかツルッとかで進んでしまうので、聞いている方はついていけません。
メゴチの捌き方は、釣具メーカーのダイワがフィールドテスターを通じて公開している方法が一番分かりやすいです。この捌き方が、まさに先輩がピッと言っていた「松葉おろし」です。メゴチ・小キス・小アジに使われる定番の開き方で、頭と内臓を取って、中骨を抜き、尾の付け根でつながった状態に開きます。文字通り松の葉っぱのように身が2つに分かれた形になることから、この名前がついています。
舵オンラインで紹介されている、ダイワ・フィールドテスターの小野信昭さんによる手順は、
- 背びれを落とすように包丁を入れる
- そのまま頭を落とす
- 包丁で骨を押さえて身をべりっと剥がす
- 背骨を落とすように包丁を2回入れて終了
1尾を捌くのにかかる時間は、わずか20秒ほど。20尾でも7分ほどで捌き終わる、と紹介されています。
下味も不要で、市販の天ぷら粉をつけて揚げるだけで美味しく食べられるとのこと。
ただし、わたしは34尾を捌くのに3時間かかりました。慣れない人は最初の数尾で時間がかかります。釣具メーカーのプロが「7分」と言うのは、熟練者の数字だと思って取り組んでください。
天ぷら屋さんで提供されるメゴチは、この松葉おろしの形で揃えられていることが多いです。身が2本に開いた状態で揚げると、見栄えがして、揚げムラも少ない。プロが手間をかけてこの形にする理由が、自分で揚げてみると分かります。
天ぷらのレシピ
下処理が済めば、天ぷらは簡単です。
材料(20尾分)
- メゴチ:20尾(下処理済み)
- 天ぷら粉:適量
- 水:天ぷら粉と同量
- 揚げ油:適量
- 塩(または天つゆ):適量
作り方
- 天ぷら粉と水を同量で混ぜる
- メゴチを衣にくぐらせる
- 170℃の油で揚げる
- 衣がキツネ色になったら取り出す
舵オンラインでも「市販の天ぷら粉をつけて揚げるだけ」と紹介されているように、メゴチの天ぷらは下味も不要で、シンプルな調理で美味しく仕上がります。
塩で食べる
メゴチの天ぷらは塩で食べるのが定番です。揚げたての衣のサクサク感と、ほのかな甘みのある身。子どもの頃に食べた小魚天ぷらの記憶を呼び起こす味です。
天つゆで食べる場合は、大根おろしと生姜を添えると、さっぱりした夏向きの一品になります。

葵ちゃんのまとめ
本記事の捌き方は、ダイワ・フィールドテスターの小野信昭氏による解説(舵オンライン)と、明石浦漁業協同組合のレシピを参考にしています。メゴチの鰓蓋には鋭いトゲがあるので、下処理時は軍手の着用をおすすめします。
投げ釣り初挑戦の日、メゴチ34尾・キス1尾という結果でしたが、一人で食べきれる量ではないので実家に持って帰って天ぷらにしました。家族から「これ全部釣ったの?」「美味しい」と言われて、嬉しかったです。
メゴチは投げ釣りの嫌われ者ですが、江戸前天ぷら三大ネタとして寿司屋・天ぷら屋では希少な高級魚扱い。釣り人だけが知っている「外道なのに美味しい魚」の代表格です。
3本針の仕掛けに連がけで上がってくるメゴチは、投げ釣り入門の風景としては定番です。シロギスを夢見て投げ釣りに行ったら、メゴチばかり釣れた——という経験は、多くの投げ釣り入門者が通る道のようです。
捌くのは大変でも、揚げたての天ぷらは確かに「江戸前三大ネタ」の呼び名にふさわしい味でした。次にもしメゴチが連がけで上がってきたら、「これは天ぷらの材料だ」と判断できます。先輩のおかげです。
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