イカ墨が服についたときの落とし方|釣り場での応急処置から素材別対処まで
堤防のイカ墨跡は「釣果の証拠」でもある
常連のお客さんが面白いことを言っていました。
「エギングのポイントを探すとき、堤防のコンクリートにイカ墨の跡があると『ここ釣れてるな』って思う」
確かにそうで、イカ墨の跡は釣果の証拠です。アオリイカが釣れた場所には墨跡が残る。それを見てポイントを判断するのは、経験に基づいた立派な読みです。
ただし同時に、その墨跡は誰かが堤防に残していった汚れでもあります。
この記事はイカ墨が飛んだときの対処法と、釣り場でのマナーを両方書きます。
なぜイカ墨は厄介なのか
イカ墨の成分はメラニン色素とタンパク質の複合体です。この二重構造が厄介です。
メラニン色素は紫外線や酸化に強く、繊維に絡みつくと落ちにくい。さらにタンパク質が時間の経過とともに固着して、色素を繊維の奥に閉じ込めます。乾いた瞬間から「シミとして定着する」モードに入ります。
アミエビの汁は臭いが問題でしたが、イカ墨は臭いはほぼなく、「色」が問題です。黒い。見た目のインパクトが強い。しかも一瞬で広範囲に飛ぶ。
エギを外す瞬間に「ブシャッ」と顔に向かって吐いてくることがあります。わたしは台所でイカ墨パスタを作ろうとして墨袋を潰した瞬間に壁と服とまな板が黒くなりました。あの日以来、イカ墨は「飛んだ瞬間に対処を始める」と決めています。
時間による難易度の変化が全てを決める
| タイミング | 難易度 | 目安 |
|---|---|---|
| ついた直後(数分以内・濡れている) | 低 | 海水で流すだけで落ちることも |
| 乾き始め(数分〜30分) | 中 | 食器用洗剤+歯ブラシで対応可 |
| 完全に乾いた | 高 | 漂白剤+つけ置きが必要 |
| 時間が経った(翌日以降) | 詰み気味 | クリーニングでも落ちないことがある |
イカ墨は「時間が全て」です。釣り場での応急処置が、その後の結果を決定的に左右します。
釣り場でやること:最初の数分が全て
海水で流す(真水より海水が効く)
イカ墨は真水より海水の方が溶けやすい性質があります。釣り場で墨が飛んだら、まず水汲みバケツの海水で流してください。帰宅後に真水で洗うより、現場で海水に浸けてしまう方が格段に効果があります。
エギングではエギにも墨がつきますが、墨がついたエギをそのまま海に投げ続けると、キャストのたびに墨が薄れていくのを経験した方も多いと思います。あれも海水の効果です。
こすらない、吸い取る
服についたらこすって広げないでください。タオルやキッチンペーパーで上から押さえて、墨を吸い取る方向で対処します。こすると繊維の奥に墨が入り込みます。
乾かさない
とにかく乾かさないことが最優先です。濡れている状態を保ちながら帰宅してください。車内での移動中も、ビニール袋に入れるなどして乾燥を防いでください。
帰宅後の対処法:素材別
綿・ポリエステル(釣り用ウェア・Tシャツ)
ステップ1:食器用洗剤で叩き出す 中性の食器用洗剤を墨のついた部分に直接つけて、歯ブラシで優しく叩くように汚れをあて布に移します。こするのではなく叩く。
ステップ2:酸素系漂白剤でつけ置き 40℃前後のお湯にアルカリ洗剤と酸素系漂白剤(ワイドハイター等)を溶かして、30分〜1時間つけ置きします。その後通常通り洗濯機へ。
注意:熱湯は使わない タンパク質は高温で固まります。熱湯で洗うと逆に落ちにくくなります。40〜50℃が上限です。
白い服
白い綿素材なら塩素系漂白剤(ハイター等)が使えます。ただし色物・ナイロン・ラッシュガードには使えません。白いラッシュガードにも使えないので注意してください。
ナイロン・ラッシュガード(釣り用アウター)
酸素系漂白剤を使ってください。塩素系は素材を傷めます。釣り専用の「エギウォッシュパウダー」はイカ墨に特化した洗剤で、ポリエステル・ナイロン系の釣り用ウェアに効果が高いです。
シルク・カシミア・ウール・ダウン
家庭での処置はやめてください。素材が傷みます。ダウンは輪ジミになるリスクがあります。すぐにクリーニング店に持っていって「イカ墨がついている」と伝えてください。
クリーニング店に頼む場合
正直に言うと、クリーニング店でも落とせないことがあります。
「クリーニング屋さんでも落とせない店が多い」という情報は複数のソースに出てきます。通常のクリーニングに出して「これは難しい」と返ってくることもあります。
クリーニングに頼む場合は、
- 「イカ墨がついています」と必ず伝える(黙って出すと通常クリーニングされるだけ)
- 「落とせますか?」と事前に確認する
- シミ抜きが得意な専門店を選ぶ(宅配クリーニングのモンスター系等)
- 「完全には落ちないかもしれない」という前提で出す
釣りエギング用の服は汚れて当然なので、「汚れても惜しくない服」を釣り用に決めてしまうのが、一番ストレスがない解決策です。わたしは釣り専用の服を決めていて、イカ墨がついても気にしません。
台所・まな板についたとき
アオリイカを台所で捌くとき、墨袋を潰してしまうと台所が大変なことになります。
すぐ拭き取る:キッチンペーパーで押さえて吸い取ります。こすって広げないこと。
中性洗剤で拭く:食器用洗剤をつけてスポンジで拭き取ります。
まな板は漂白剤:白いプラスチックのまな板は塩素系漂白剤で。木のまな板は塩素系が使えないので、酸素系漂白剤か重曹でつけ置きします。
壁・コンロ周り:メラミンスポンジ+中性洗剤が有効です。タイルなら漂白剤も使えます。
クーラーボックスについたとき
帰宅後すぐに洗ってください。乾くと落ちにくくなります。中性洗剤で洗い流した後、気になるなら酸素系漂白剤でつけ置きします。クーラーボックスのプラスチックはメラミンスポンジが有効です。
堤防に残さないためのマナー
ここが本題でもあります。
堤防のイカ墨跡はポイントを示す「情報」として使われますが、公共の釣り場を汚していることも事実です。コンクリートについた墨は雨で流れるまで残り、人気のエギングポイントは墨跡で黒ずんでいくことがあります。
自分がつけた墨は自分で流す。これだけです。
水汲みバケツの海水でかけ流す:釣り場に水道がなくても、バケツ1杯の海水をかけるだけでかなり落ちます。完全には消えなくても、次の雨で流れる状態にはなります。
締めた直後に墨袋を取る:締めたイカは力が抜けているため、墨袋を早めに取り出しやすい状態です。墨袋を釣り場で取っておくと、クーラーに入れた後の墨漏れも防げます。
タモで十分吐かせてから陸に上げる:釣れたイカをタモに入れてしばらく海面で揺らすと、墨を海中に吐き出してから陸に上がってきます。これで釣り場に墨が飛ぶリスクが大幅に減ります。
エギングで墨を浴びないための予防
「飛んでから対処」より「飛ばせない工夫」の方が根本解決です。
陸に上げる前に海水でゆすぐ:上述のタモ作戦。
ランディング時は体から離して:イカを手元に引き寄せるとき、体から離した場所でエギを外す。墨が飛んでも服に当たりません。
エプロンか汚れていい服を着る:エギングには汚れてもいい服を専用に決めてしまう。これが一番ストレスフリーです。
ビニール手袋:墨が手につくのを防ぎます。手についた墨は石鹸で何度か洗えば落ちますが、しばらく薄黒い状態は続きます。

葵ちゃんのまとめ
本記事の染み抜き方法は一般的な情報をもとにしています。衣類の素材・染色・状態によっては効果が異なる場合があります。デリケートな素材や大切な衣類は、専門のクリーニング店にご相談ください。漂白剤を使用する際は必ず素材表示を確認し、目立たない部分でテストしてから使用してください。
イカ墨パスタを作ろうとして墨袋を潰した日、台所の壁と服とまな板が黒くなりました。あのとき一番後悔したのは「すぐに対処しなかった」ことです。「とりあえず後で洗おう」と思って放置した15分の間に、墨が乾いて定着していました。
イカ墨は時間が全てです。ついた瞬間に動けるかどうかで、落ちるか落ちないかが決まります。釣り場では海水で流す、帰宅後すぐ洗う。この2つを守るだけで、大半のイカ墨は落とせます。
堤防の墨跡はポイントの情報として使わせてもらっていますが、自分がつけた墨だけはちゃんと流して帰りたいと思っています。全員が流してくれたら、堤防が黒ずむスピードが少し落ちるはずです。
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