釣り人の肩と肘がやられる話|テニス肘は釣り人にも起こります
釣りのせいで肘が痛いのに「テニス肘ですね」と診断された
知り合いの釣り人が肘に違和感を覚えて整形外科を受診したそうです。本人としては「釣りのシャクリやキャストで肘を傷めた」という自覚があり、それを伝えるつもりで診察室に入りました。
医師の診断は「テニス肘ですね」。
本人は「いえ、釣り肘です」と返したそうですが、スルーされたとのこと。医師の判断は正しいです。「テニス肘」は医学的には外側上顆炎の通称で、テニス選手だけがなるわけではありません。繰り返し腕を使う動作で誰でも発症します。
そして釣りは肘を酷使する動作の宝庫です。エギングのシャクリ、投げ釣りのキャスト、リーリング、合わせ——全部肘の外側に負荷をかけ続ける動作です。釣り人がテニス肘になるのは、むしろ自然な流れです。
腰の記事では座る釣りと立つ釣りで対策が違うと書きました。腕と肩も釣りの種類で負荷のかかり方が違います。
釣りで肩・肘がやられる動作
エギングのシャクリ
竿を上下に動かす動作の繰り返し。手首・肘・肩・体幹を連動させて使うので、フォームが悪いと特定の部位に負荷が集中します。
特に肘の外側(テニス肘の患部)と、肩の三角筋・僧帽筋に来ます。5時間シャクリ続けた翌日、肩が腕の重さで上がらないのはこれが原因です。
投げ釣りのキャスト
オモリの重さを利用して大きく振りかぶる動作。一見ダイナミックですが、回数を重ねると肩・肘・手首に蓄積します。
砂浜の引き釣りでは「投げる→サビく→止める→また投げる」を繰り返すので、同じ動作の累積回数が他の釣りより多いです。
リーリング(リールを巻く)
意外と侮れません。シーバスやジギングで魚をかけた瞬間から、ハイギアのリールを連続で巻き続ける動作は手首と肘に負荷をかけます。大物がかかると数分間休まずに巻き続けることもあり、その後に肘がじんじんします。
合わせ
魚のアタリで竿を煽る瞬間の動作。短時間ですが、瞬発的な負荷が肩と肘に来ます。連続して合わせが入ると、その日の終わりには腕が重くなっています。
テニス肘(外側上顆炎)の話
医学的に「テニス肘」と呼ばれるのは肘の外側の痛みで、手首を反らす動作や物を握る動作で痛みが出ます。
釣り人の場合、
- 重いタックルバッグを持ったときに肘が痛い
- 竿を握って構えたときに肘が痛い
- ペットボトルの蓋を開けるときに肘が痛い
このあたりが該当します。日常生活でも違和感が出るのが厄介です。
原因は同じ動作の繰り返しによる、肘の外側の腱の炎症です。シャクリやキャストの累積が、知らないうちに腱を傷つけています。
予防は、
フォームを見直す:腕先だけで投げない、シャクらない。体全体を使うのが基本です。キャストは下半身から始まって体幹を経由して腕に力が伝わる動き、シャクリも腕だけでなく肩甲骨から動かす意識を持つだけで、肘への負荷が大幅に減ります。腕先だけで操作している人は、何時間も連続すると肘の特定の場所に負荷が集中します。
サポーターを使う:肘用のサポーター(テニス肘用バンド)が市販されています。長時間の釣行のときに装着すると、症状の悪化を防げます。
休む:痛みが出始めたら、その日は早めに切り上げる。痛みを我慢して続けると悪化します。
治療は、
安静にする:軽症なら数日〜数週間の安静で治ります。
整形外科を受診:痛みが続く場合は整形外科へ。湿布・ストレッチ指導・場合によっては注射などで対処してくれます。
肩が上がらない問題
釣行の翌日に肩が上がらない、というのは多くの釣り人が経験します。
原因
肩の三角筋・僧帽筋・回旋筋腱板の疲労が主因です。シャクリやキャストで連続して肩を動かし続けると、これらの筋肉が固まります。
特に冷えた日に長時間釣りをすると、筋肉が冷えて血流が落ちた状態で動かし続けることになるので、翌日の固まり方が増します。
対策
釣行前に軽く肩を回す:いきなり全力でシャクリ始めるのではなく、肩を前後10回ずつ回してから始めるだけで違います。
釣行中も肩を動かす:1時間に1回、両肩を大きく回すストレッチを30秒。釣れない時間なら遠慮なくできます。
帰宅後の風呂で温める:シャワーで済まさず湯船で肩までしっかり温めてください。
寝るときの姿勢:横向きで寝る派の人は、肩の下にタオルを巻いて挟むと圧迫を減らせます。
1日完全に休む:翌日に予定があってもう一度釣りに行く、というのが一番ダメージが残ります。連日釣行の場合、2日目は腕を使う釣り以外を選ぶか、休憩を多めに取ってください。
受診の目安
「いつもの疲れ」と「医者に診てもらうべき状態」の区別は重要です。
様子を見てよい
- 釣行翌日に肩や肘が重い・だるい
- 2〜3日で自然に回復する
- 日常生活に支障がない
受診すべき
- 1週間以上痛みが続く
- 日常動作(物を持つ・服を着る・蓋を開ける)で痛みが出る
- 痛みが徐々に悪化している
- 痺れや感覚の異常がある
「釣りで腕を痛めただけ」と軽視しないでください。テニス肘の慢性化、腱板損傷、頚椎ヘルニアからの放散痛など、深刻な原因が潜んでいる可能性があります。
普段からやれること
釣り場での対策だけでなく、普段の体作りも効きます。
肩甲骨ストレッチ:日常的に肩甲骨を動かす習慣をつけると、シャクリ動作のキレが変わります。腕だけでシャクっていた人が、肩甲骨から動かせるようになると、肘への負荷が分散されます。
握力トレーニング:竿を握る力は意外と疲労します。グリップトレーナーで日頃から鍛えておくと、長時間釣行が楽になります。
前腕ストレッチ:手のひらを上向きにした腕を、反対の手で手首から指を引っ張ってストレッチ。これだけでテニス肘の予防になります。

葵ちゃんのまとめ
本記事は一般的な体のケアの情報をまとめたものです。痛みが続く場合は整形外科の受診をお勧めします。本記事は医療助言ではありません。
エギングを始めた頃、5時間シャクった翌日に肩が上がらなくなって「腕がもげる」と思いました。今は釣行前のストレッチと釣行中の肩回しを習慣にしているので、翌日の状態が全然違います。
知り合いの「釣り肘です」エピソードは、釣り人の気持ちとしては完全に正しいです。釣りで肘を傷めたのだから「釣り肘」と呼びたい。ただ医学的にはテニス肘と扱われるので、診察では正しい用語で伝えた方が早く治療が進みます。
腕と肩は釣りの最前線です。ここを酷使し続けると、シャクリのキレが落ち、キャストの飛距離が落ち、釣果も落ちます。腕のメンテナンスは釣果に直結する話です。
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