釣り用レインウェアは耐水圧と透湿度で選んでください

梅雨の時期、レジで一番聞かれる質問です

「これとこれ、何が違うんですか?」「雨でも釣りたいんですけど何を買えばいいですか?」「ゴアテックスって本当に必要ですか?」——梅雨の時期、レインウェアの相談を毎日受けます。

正直に書くと、わたし自身は雨の日に釣りに行きません。雨具着てまで竿を振りたいタイプではないので、降ったら家で本を読んでいます。

ただ、釣具店スタッフとしてレインウェアの説明は責任を持ってします。雨でも釣りに行く人にとって、装備の解像度は釣行の質を決めます。性能の数値とブランドの違いを整理しておきます。


まず2つの数値を理解してください

レインウェアの性能は、ほぼ2つの数値で決まります。

耐水圧(たいすいあつ)

生地がどれくらいの水圧に耐えられるかを示す数値。単位はmm。数字が大きいほど水を弾く性能が高い

耐水圧 耐えられる雨の強さ
〜2,000mm 小雨程度
5,000mm 中雨〜本降り
10,000mm 大雨
20,000mm以上 暴風雨・嵐

参考までに、人が座ったときにレインウェアにかかる水圧が約2,000mm、ひざをついたときが約11,000mm。釣りで岩場やテトラに座る・しゃがむ動作を考えると、最低でも10,000mm欲しい計算になります。

透湿度(とうしつど)

生地が汗の蒸気をどれくらい外に逃がせるか。単位はg/㎡/24h。数字が大きいほど蒸れにくい

透湿度 対応する活動量
5,000g 軽い運動・ウォーキング
10,000g 通常の運動
20,000g ランニング・ハイキング
30,000g以上 激しい運動

釣りは静的に見えて、キャストや移動でかなり汗をかきます。特に夏場のエギングやランガンスタイルの投げ釣りは透湿度が低いと、内側で結露して「外は乾いているのに内側がびしょ濡れ」という状態になります。


価格帯と性能の関係

レインウェアは大きく4段階に分かれます。

① 100均カッパ・ポンチョ

耐水圧の表記すらないことがほとんど。実測では1,000〜2,000mm程度。

用途:突然のにわか雨をしのいで車に戻るまで。1〜2回使ったら破れる前提で。

限界:本降りには30分も耐えません。フードが顔にかぶってキャストできない。動くたびに破れる音がします。サイズが大きすぎて風に煽られると小さなパラシュート状態になります。

「雨が降ったら帰る」と決めている方には十分。でも雨の中で粘る使い方は無理です。

② ポンチョ・カッパ(数千円)

耐水圧3,000〜5,000mm、透湿度はあっても1,000〜3,000g程度。

用途:軽い雨の中での短時間の釣り。突然の雨に備えてタックルバッグに常備。

限界:透湿度が低いので、長時間着ると内側が汗で湿ります。サイズが合っていないと風で煽られて動きにくい。

③ ワークマン イナレム(税込4,900円)

ここから一気に性能が上がります。

ワークマン独自開発の素材「イナレム」を採用したレインウェアの耐水圧は20,000mm、透湿度は25,000g/㎡/24h。価格はジャケットとパンツの上下セットで税込4,900円。

数字上は次に紹介するゴアテックスと正面から戦えるレベルです。

メリット:圧倒的なコスパ。性能だけ見れば数万円のアウトドアブランドと変わらない。

デメリット:ポケットの数や配置、細部の仕立てはアウトドアブランドに劣ります。釣りで使うときに「ここにポケットが欲しい」が叶わない場面はあります。耐久性も長期使用ではゴアテックス系に劣るという評価が多い。

「年に数回しか雨の中で釣りをしない」「初めての本格レインウェア」「コスパ重視」の方には最有力候補です。

④ シマノ・ダイワの釣り専用レインウェア(15,000〜50,000円)

シマノとダイワは、釣り用に最適化されたレインウェアを各価格帯で出しています。耐水圧20,000mm以上、透湿度8,000〜20,000gが標準的なスペックです。

メリット:釣り用として完璧に作り込まれています。リーダーやハサミを入れやすいポケット配置、ロッドホルダー、シェイクキャッチャー(袖口の水侵入防止)、防水ファスナー、フードのキャップ対応など、釣り人が「ここに欲しかった」が全部入っている。シマノの「DSアドバンスウォームスーツ」やダイワの「レインマックス」シリーズが代表格です。

デメリット:ゴアテックスを採用していないモデルが多く、純粋な透湿性能はゴアテックス上位品にやや劣ります。価格は中位モデルで15,000〜25,000円、上位モデルで30,000〜50,000円。

ゴアテックス vs シマノ・ダイワ:純粋な防水透湿性能ならゴアテックスが上、釣り用としての使い勝手ならシマノ・ダイワが上、というのが現実的な整理です。両方買う必要はなく、釣行頻度と予算で選んでください。

⑤ ゴアテックス採用のアウトドアブランド(30,000〜80,000円)

モンベル・パタゴニア・コロンビア等のゴアテックス採用ウェア。耐水圧50,000mm、透湿度35,000g程度。

メリット:性能の絶対値が最高水準。耐久性も高く、5〜10年使えます。釣り以外(登山・ハイキング・通勤)にも使えます。

デメリット:釣り専用に最適化されているわけではないので、ポケット配置やフードの作りは釣りでは不便な場合があります。

「年中アウトドアで使う」「釣り以外でも着る」方向け。釣り専用ならシマノ・ダイワの方が使いやすいです。


選び方の判断フロー

月1回未満の雨釣行

ポンチョ・カッパ(数千円)か、思い切ってワークマンのイナレム。100均カッパは「忘れたとき用」として車に1着積んでおく程度の位置付けで。

月数回の雨釣行

ワークマンのイナレムか、シマノ・ダイワの中位モデルが第一候補。コスパ重視ならイナレム、釣り用の使い勝手重視なら釣具メーカー。

毎週・通年で雨でも釣る

シマノ・ダイワの上位モデル、またはアウトドアブランドのゴアテックス採用品を検討。釣り専用ならシマノ・ダイワ、釣り以外でも使うならアウトドアブランド。3〜5年で元が取れます。

真夏の雨釣行

透湿度が決め手になります。耐水圧10,000mmあれば真夏の雨には十分なので、透湿度15,000g以上を優先してください。蒸れて熱中症になる方が雨に濡れるより危険です。


ワークマンの限界を知っておく

ワークマンは数値上はゴアテックス並み。でも釣り用として完全ではない部分があります。

ポケット配置:釣り用に最適化されていないので、リーダーやハサミを入れたい場所にポケットがない。

フードの作り:キャップを被ったままフードを被ると視界が狭くなる製品がある。釣りでフードを使う前提なら試着が必要。

耐久性:年に100日以上着る使い方だと、2〜3年で生地が痛む可能性。アウトドアブランドの上位モデルは5〜10年持ちます。

ベンチレーション(脇の通気口):上位モデルにはあるが、ワークマン製品にはないか簡素な作り。

「数値は同じだが、釣り用として最適化されているのは上位ブランド」という整理が現実的です。ワークマンの1,500円〜5,000円で十分な人と、上位ブランドの30,000円が必要な人は、釣行頻度と使い方で分かれます。


葵ちゃん

葵ちゃんのまとめ

「ゴアテックスが必要ですか?」と聞かれたら、まず「年に何日くらい雨の中で釣りしますか?」と聞き返します。年5日以下ならワークマンのイナレムで十分。年30日以上なら、シマノ・ダイワの上位モデルか、アウトドアブランドのゴアテックスを検討する価値があります。シマノ・ダイワは釣り用の使い勝手が圧倒的に良く、ゴアテックスは絶対性能と汎用性が高いという棲み分けです。

100均カッパは「車に1着積んでおく」用途では優秀です。ただし「これでなんとかしよう」と思って釣行に出るのは、判断の解像度が低い装備です。

雨の中で釣りをするなら、耐水圧10,000mm以上・透湿度10,000g以上を目安にしてください。これを下回ると、雨に濡れるか汗で蒸れるかのどちらかで結局びしょ濡れになります。

なお、わたしは家にいて本を読んでいます。これは個人の好みです。雨でも釣りたい方の装備は、責任を持って提案します。

春の釣りの服装 →

釣り人の日焼け対策 →


本記事の価格・性能数値は2026年5月時点の一般的な情報をもとにしています。製品の仕様は変更されることがあります。購入前にメーカー公式情報をご確認ください。