知らないと罰金3,000万円?!釣り人が知っておくべき漁業権の話

「日間賀島でタコ釣りたい」——それ、できません

先輩の友人が「日間賀島に行ってタコ釣りたい」と言ったそうです。先輩が「タコは漁業権があるから釣れないよ」と答えたら、「でも日間賀島といえばタコでしょ!」「だからダメなんだよ」「なんでだよ」と噛み合わなかったらしいです。

この「有名だから釣れると思った」→「有名だからこそ漁業権で守られている」という逆の関係は、知らないと本当に引っかかります。日間賀島のタコ、明石のタコ、三浦のサザエ——名産であればあるほど、地元の漁業者が長年かけて育てて守っている資源です。

「知らなかった」は通用しません。釣り人として最低限知っておくべき漁業権の話をまとめます。


3つのレベルで罰則が違います

漁業に関するルール違反は、対象によって罰則の重さが全く異なります。

レベル1:特定水産動植物(最も重い)

アワビ・ナマコ・シラスウナギの3種は「特定水産動植物」に指定されています。2020年12月の漁業法改正で、この3種については漁業権の内外に関わらず、一般人が獲ること自体が全面禁止になりました。

違反した場合、3年以下の拘禁刑または3,000万円以下の罰金です。

1個でもアウトです。「自分で食べるだけ」「1個だけ」は通用しません。磯遊びで見つけたアワビを持ち帰っただけで逮捕された事例が実際にあります。

この3種が特別に厳しいのは、反社会的勢力の資金源として組織的な密漁が横行していたためです。個人のレジャー感覚の密漁も増加しており、罰則が大幅に強化されました。

レベル2:漁業権の対象種(要注意)

日本のほとんどの沿岸部には「第一種共同漁業権」が設定されています。以下のような定着性の水産動植物が対象です。

貝類:サザエ・アサリ・ハマグリ・トコブシ・カキなど 甲殻類:イセエビなど 軟体動物:タコ(マダコ等)など 棘皮動物:ウニなど 海藻類:ワカメ・コンブ・ヒジキ・テングサなど

これらを漁業権が設定された場所で無断で獲ると、100万円以下の罰金です。

日間賀島のタコはまさにこのケースです。「タコ釣り」は一見すると普通の釣りに見えますが、漁業権の対象種であれば密漁になります。

レベル3:都道府県の漁業調整規則

各都道府県が独自に定めているルールです。使用できる漁具・漁法の制限、魚種ごとの体長制限、禁漁期間、禁漁区域などが細かく規定されています。

違反した場合は6ヶ月以下の懲役または10万円以下の罰金(都道府県により異なります)。


普通の釣りは基本的にOKです

ここまで読んで「じゃあ海で釣りすること自体がだめなの?」と思った方もいるかもしれません。

普通の釣り(竿と糸を使った釣り)で、一般的な魚を釣ることは基本的に問題ありません。アジ・サバ・イワシ・シロギス・カサゴ・メジナ・クロダイ・アオリイカ——こういった魚を竿で釣ることは、ほとんどの場所で合法です。

問題になるのは以下のケースです。

漁業権の対象種を獲ること(タコ・サザエ・アワビ・ウニ・イセエビ・ナマコなど)。立入禁止区域で釣りをすること。禁止されている漁法を使うこと(刺し網・潜水器など、都道府県ごとに異なります)。禁漁期間・禁漁区域に違反すること。


「タコ釣りは全面禁止」ではない

誤解されやすいのですが、タコ釣り自体が全国一律で禁止されているわけではありません。

タコは「特定水産動植物」ではなく「漁業権の対象種」です。つまり漁業権が設定されている場所では獲れませんが、設定されていない場所では獲れる可能性があります。

ただし日本の沿岸部のほとんどに漁業権は設定されているため、実質的にタコが合法的に釣れる場所はかなり限られます。「ここはタコ釣りOK」と明確に確認できない限り、手を出さない方が安全です。

タコ釣りがしたい場合は、地元の漁協や釣具店に確認してください。漁協が遊漁者向けに許可を出しているケースもあります。


テレビの無人島サバイバルは特別許可です

テレビ番組でタレントが素潜りでサザエやウニを獲って焼いて食べている場面を見たことがあると思います。あれは番組制作会社が漁協や行政から特別な許可を得て撮影しています。

一般人が同じことをすると密漁です。テレビを見て「自分もやっていいんだ」と思ってしまう人が実際にいます。


釣り場で気をつけること

看板を確認する

漁業権が設定されている沿岸部には「遊漁者のみなさんへ」「注意」「採取禁止」などの看板が立てられていることが多いです。釣り場に着いたら、まず看板を確認してください。

岩場で見つけた貝や海藻を持ち帰らない

磯遊びの延長で、岩場に付いているサザエやトコブシ、ワカメを持ち帰る人がいます。これは漁業権の侵害になる可能性が高いです。「落ちていたから拾った」は通用しません。

先輩の野比海岸のレポートにも「貝類には漁業権が設定されていることがあるため、むやみに採取しないように」と書いてありましたが、本当にその通りです。

釣れてしまった場合

特定水産動植物(アワビ・ナマコ)が釣り針に偶然かかってしまった場合は、すぐにその場で海に返してください。持ち帰った時点で違反になります。


罰則の整理

対象 具体例 罰則
特定水産動植物 アワビ・ナマコ・シラスウナギ 3年以下の拘禁刑 or 3,000万円以下の罰金
漁業権の対象種 タコ・サザエ・ウニ・イセエビ・ワカメ等 100万円以下の罰金
漁業調整規則違反 禁止漁法・禁漁期間・体長制限等 6ヶ月以下の懲役 or 10万円以下の罰金(都道府県による)

確認する方法

行き先の漁業権や漁業調整規則を事前に確認するには、以下の方法があります。

各都道府県の水産課のウェブサイトに漁業権の内容が公開されています。水産庁の「遊漁の部屋」に全国の遊漁ルールがまとめられています。現地の釣具店に聞くのが最も確実です。「この場所でタコは釣れますか?」と聞けば、漁業権の有無も含めて教えてもらえます。


葵ちゃん

葵ちゃんのまとめ

釣具店で働いていると、「タコ釣りしたい」「サザエ獲りたい」という相談を受けることがあります。そのたびに漁業権の話をするのですが、ほとんどの方が「知らなかった」と驚きます。

知らなかったで済まないのが漁業権です。アワビ1個で3,000万円の罰金、タコ1匹で100万円の罰金——額面だけ見ると「まさかそんな」と思いますが、実際に逮捕者が出ています。レジャー感覚の密漁は毎年増加していて、海上保安庁や警察のパトロールも強化されています。

釣り人として覚えておくべきことはシンプルです。竿で魚を釣るのは基本的にOK。ただし岩場の貝・海藻・タコ・ウニ・イセエビには手を出さない。看板を確認する。分からなければ釣具店に聞く。

名産だから獲れると思うのは逆で、名産だからこそ守られています。日間賀島のタコは、日間賀島の漁師さんが守っているタコです。


本記事は政府広報オンライン、水産庁、各都道府県の公開資料をもとにした情報です。漁業権の対象種や漁業調整規則の内容は地域によって異なります。釣行前に各都道府県の水産課または地元の漁協にご確認ください。本記事は法律の専門的な助言ではありません。