砂底の魚はなぜ白身が多いのか|キス・カレイ・マゴチで釣り方が違う理由
子どもたちを連れて三浦海岸で釣りをしていたとき、シタビラメが釣れました。
普段釣りをしない人たちにとっては「とんでもないものが釣れた」という顔をしていて、「ムニエルで有名なあれじゃないか」という声が上がりました。釣り人からすれば砂底ではよく見かける外道ですが、言われてみれば確かに料理としての知名度がある。
シタビラメもキスも、同じ砂底に住んで同じように釣れて、食べると同じように美味しい。これは偶然ではなく、砂底という環境が魚の体と行動を同じ方向に作り上げた結果です。砂底を好む魚の共通の生存戦略から読み解きつつ、魚種ごとの行動の違いにも触れていきます。
砂底という環境で生きるということ
砂底に住む魚の多くは、砂に潜るか砂に擬態して身を守ります。
シタビラメ・カレイ・ヒラメは平たい体で砂に沈みます。体の色を砂に合わせる擬態能力を持ち、上から見るとほとんど分かりません。シロギスは危険を感じると砂に潜ります。マゴチは砂底にじっと張り付いて獲物を待ちます。
共通しているのは「動かないことで生き残る」という戦略です。積極的に泳ぎ回って逃げるのではなく、砂に隠れて存在を消す。
この生き方は筋肉の使い方に直結します。
なぜ砂底の魚はみんな白身なのか
魚の身が赤いか白いかは、筋肉の使い方の違いです。
マグロやカツオのような回遊魚は長距離を高速で泳ぎ続けます。持続的な運動に使われる筋肉には、酸素を運ぶミオグロビンというタンパク質が多く含まれ、これが赤みの原因です。
砂底でじっとしている魚は違います。瞬間的に動くことはあっても、長距離を泳ぎ続けることはほとんどありません。ミオグロビンの含有量が少なく、身が白くなります。
「動かない生き方」が「白身」を作る。シタビラメ・カレイ・キス・マゴチが揃って白身なのは、砂底という環境が選ばせた結果です。
砂底の魚は持久力ではなく瞬発力で生きています。その瞬発力に使われる筋肉は速筋で、これが白身のきめ細かさとも関係しています。
生態を知ると、釣り方の理由がわかる
砂底の魚は、砂の中や砂底付近に潜む生き物——ゴカイ・小型甲殻類・小魚——を食べます。住んでいる場所が同じだから、食べているものも似てくる。ただ「砂底の魚」といっても、捕食スタイルが違えば有効な釣り方も変わります。
キス 積極的に探して吸い込む
シロギスは砂底を泳ぎながらゴカイを探し、口を突き出して砂ごと吸い込みます。仕掛けを引いて動かす「引き釣り」が有効なのはこのためです。群れで移動しているキスの前に仕掛けを通し続けることで、食わせるチャンスが増えます。エサのタラシを短くするのも、小さな口で吸い込みやすくするためです。
カレイ・シタビラメ じっと待って食いつく
カレイとシタビラメは待ち伏せ型です。砂底でじっとしていて、近くに来た獲物を捕食します。キスと違って仕掛けを動かし続ける必要はなく、砂底に置いて待つ「置き竿」スタイルが有効です。むしろ動かしすぎると食いが落ちることがあります。カレイが「投げて置いておく釣り」と言われるのは、この生態から来ています。
マゴチ 瞬発力で下から飛びつく
マゴチは砂底に体を沈めて小魚を待ち伏せし、頭上を通った獲物に下から飛びつきます。この「止まったところに飛びつく」習性から、ルアーやジグヘッドリグを底付近でゆっくり引いて、ときどき止めるストップ&ゴーが効きます。仕掛けが止まった瞬間に食ってくることが多い。
ヒラメ 下から飛び出して小魚を捕る
ヒラメもマゴチと似た待ち伏せ型ですが、より小魚を意識した捕食をします。砂底から素早く飛び出して、頭上を泳ぐ小魚を下から食います。ルアーは底付近をトレースしながら、フォール(落下)のタイミングで食わせるのが基本です。ヒラメのルアー釣りで「ただ巻き」と「フォール」を組み合わせるのは、底から飛び出す捕食のタイミングに合わせるためです。
これらが「仕掛けを砂底に這わせる」という共通点を持ちながら、細かい操作が魚種によって変わる理由です。
シタビラメという魚について
せっかくなのでシタビラメを少し掘り下げます。
日本でシタビラメと呼ばれる魚はいくつかの種類があり、代表的なのはアカシタビラメとクロウシノシタです。フランス料理で「ソール」として使われるのはヨーロッパのシタビラメの仲間で、日本のシタビラメとは正確には別種ですが、形状・食性・食味が近く調理法も共通する部分が多い。
食べ方は西洋ではムニエルが定番ですが、日本では煮付け・天ぷら・唐揚げが主流です。どの調理法でも淡白でクセがなく、上品な白身の旨味があります。
漁獲量が少なく流通しにくいため、スーパーではほぼ見かけません。釣り人が偶然釣り上げるか、産地の料亭に直送されるか——シロギスと似た立ち位置の魚です。
フグの話
フグも砂底の住人です。砂に潜って身を隠す「潜砂行動」があり、食性もゴカイ・甲殻類・貝類と砂底の住人の典型。しかも最高級の白身魚です。ただ他の魚と違い毒があり、調理に専門の資格がいるだけです。
同じ砂底に住んでいる白身魚だから仕方がないのです。
魚の食味・調理法は個体・季節・産地によって異なります。フグの調理には専門の資格を持つ方にご依頼ください。