空調ベストが涼しくなくなる気温、35℃でした

涼しくならなかった日

7月の館山遠征、車の外気温計が35℃を示していました。空調ベストのスイッチを入れても、ちっとも涼しくない。空調ベストも酷暑には勝てないかと思いました。

帰ってから調べてみたら、やっぱりそうでした。空調服には、メーカー自身が公表している「効果の限界点」があるんですね。知りませんでした。

その前に、基本の話をひとつ

装備の話に入る前に。どんなものを着ていても、こまめな水分とミネラルの補給、日陰での休憩が熱中症対策の土台であることは変わりません。空調ベストもペルチェベストも、この基本の代わりにはならない。それだけは先に書いておきます。

メーカーが「限界点」を公表していた

空調服(ファン付きウェア)は、ファンで外気を取り込んで、汗の気化熱で体を冷やす仕組みです。うちわで扇ぐと涼しいのと同じ原理ですね。

で、この情報にたどり着いた経緯が面白かったので書いておきます。

きっかけは「コミケで空調服はマジでやめた方が良い」という一般ユーザーの投稿でした。炎天下や熱気のこもった室内では効果がほとんどない、という主旨のものです。これに対して、株式会社空調服の公式アカウントが引用リプライで反応しました。

普通なら反論しそうなところですが、公式の返答は「冷却の有効範囲の目安をホームページに掲載しております。オレンジや赤の環境では『冷却の効果』はほぼ無いとしております」というものでした。自社製品の限界を、自分からデータ付きで示したわけです。

添えられていたグラフでは、気温35℃・湿度60〜70%のところが「快適限界点」とされていました。ここを超えると冷却効果は急速に落ちて、最終的にはほとんど効果がなくなる。メーカー自身がそう説明しているんです。

このやりとりには「公式自らデータで示してくれるのはありがたい」「現場仕事の体感とほぼ一致する内容」といった反応が集まっていました。私も館山の体感と一致していて、妙に納得してしまいました。

言われてみれば当たり前なんですよね。ファンが送り込んでいるのは「外の空気」なので。

外気40℃のとき、ファンは40℃の風を体に送り続けることになります。気化熱で汗を飛ばす効果と、40℃の温風を浴び続ける害。どちらが勝つのか。館山で感じた「涼しくならない」は、気のせいじゃなかったわけです。

気温と湿度の組み合わせで見てみた

調べていくうちに、皮膚の表面温度が体温より低くて、おおむね33〜35℃だということも知りました。空気の温度がこれを超えると、風は熱を運び去るのではなく、運び込む側に回る。ここが分岐点なんですね。

日本の夏にありがちな組み合わせで並べてみました。

現地の気温 湿度 状態
25〜30℃ 50〜70% 効果あり。いちばん快適に働く帯
30〜33℃ 50%前後 効果あり(メーカーの公称値はこの条件で算定)
30〜33℃ 80%以上 効果が鈍る。汗が蒸発しないため
33〜35℃ 60〜70% 限界点。ここから効果が急速に落ちる
35℃以上 60%以上 ほぼ効果なし
35℃以上 80%以上 逆効果になりうる。熱を受け取るだけになる

湿度が低ければ40℃近くても気化冷却は多少働くらしいのですが、日本の夏、しかも海沿いでその条件はまずないですよね。

いちばんの発見はここでした

ひとつ補足があります。上の表の「気温」は天気予報の数字ではありません。ここが今回いちばんの発見でした。

天気予報の気温って、日射を遮った条件で地上1.5mの高さで測った値なんです。釣り場の実態とはまるで別物。あるエアコン工事業者さんの実測例では、予報の最高気温29.5℃に対して、アスファルト路面上では40.6℃を記録していました。10度以上の差です。

砂浜も堤防のコンクリートも、照り返しの強さは似たようなもの。つまり予報28℃の日でも、自分が浴びている空気は33℃を超えているかもしれない。装備の判断を予報値でやっていたら、そりゃ外すよなと納得しました。

体感で見るなら、こんなサインがあると思います。

  • 風を受けても涼しく感じない → 空気の温度が皮膚温に近づいている
  • 汗が乾かず、肌に張りついたまま → 湿度が高くて気化冷却が働いていない

この2つが同時に来たら、空調ベストはもう仕事をしていない。館山でまさにこれでした。

ペルチェベストはどうなのか

じゃあ他に手はないのかと調べたら、ペルチェベストというものがありました。半導体素子に電気を流して、金属パネル自体を直接冷やす仕組み。空調服とは原理がまったく違います。

外気を取り込むわけじゃないので、外気温に左右されにくいのが強みだそうです。気温45℃を再現した検証記事では、サーモグラフィーでデバイス接触面が20℃前後まで下がったという実測が出ていました。45℃で20℃。数字だけ見るとすごいですね。

ただ、脇や首元をピンポイントで冷やす方式が主流なので、空調服みたいに全身を風で包む涼しさとは別物のようです。局所的な「ひんやり感」に慣れて鈍くなることもあるとか。デバイスとバッテリーで数百グラム重くなるのも、荷物の多い投げ釣りだと地味に効いてきそうです。

で、どう使い分けるか。現地の空気を基準に考えると、こんな整理になりました。

状況 装備
早朝マズメ、現地30℃未満、風あり 空調ベスト単体で足りる
風があり、汗が乾いていく実感がある 空調ベスト単体で足りる
日陰に退避できる、数時間で切り上げる 空調ベスト単体で足りる
現地の空気が33℃を超えている 併用または切り替えを検討
湿度70%超、汗が蒸発している実感がない 併用または切り替えを検討
日陰のない砂浜・堤防に日中2時間以上 併用または切り替えを検討
無風、または海風が止まる時間帯 併用または切り替えを検討

35℃を超えるような日は、使い分けか併用が必要になってくるのかもしれません。

準備万端、ご安全に

というわけで、装備を過信していた自分に少し反省しています。道具にはそれぞれ得意な気温帯があって、その外側では期待した働きをしてくれない。当たり前といえば当たり前ですが、実際に「涼しくならない」を体験するまで知りませんでした。

ちなみにアイスクリームで体を冷やす効果は限定的だそうです。館山でクーリッシュを2本飲んだ身としては、耳が痛い話でした。食べすぎにはご注意を。

準備万端、ご安全に。


※本記事の情報は執筆時点のものです。製品の仕様や効果は個体差・使用環境により異なります。熱中症の症状が疑われる場合は、無理をせず涼しい場所で休み、水分・塩分を補給してください。症状が重い場合は速やかに医療機関を受診してください。