風速何メートルで釣りをやめるか|わたしの撤退ライン

安全の話ではなく、快適さの話です

風が強い日に釣りをするかどうか。この記事で書くのは「危険だからやめましょう」ではありません。消波ブロックの安全記事やうねりの記事で安全の話は書きました。

この記事は「その風で釣りが楽しいですか?」「その風で釣りとして成立しますか?」という話です。


家で判断するライン:先輩は7m/s

先輩は天気予報を見て風速7m/sが出ていたら、家を出ません。

「7m/sは砂浜で砂が舞い始める風速で、リールに砂が入る。投げ釣りでリールに砂が噛んだら巻き心地が終わる。リールのために行かない」

先輩の撤退ラインは「安全」ではなく「リールの保護」です。道具を守るための判断。7m/sで砂嵐になる砂浜で、ハイエンドのリールを使うわけにはいかない。合理的です。

ただしこれは砂浜の投げ釣りの話です。堤防のサビキなら7m/sでも釣りにはなるかもしれないし、港内の穴釣りなら風の影響はほぼありません。「何メートルでやめるか」は釣りの種類と場所で全然変わります。


わたしの判断基準:エギングは5m/sで迷う

わたしのメインはエギングです。エギングは風に弱い釣りです。

エギをキャストして、フォールさせて、着底を確認して、シャクって、またフォールさせる。この一連の動作で一番大事なのはフォール中のライン管理です。エギングテクニックの記事で書いたテンションフォールは、ラインの張りを一定に保つことでアタリを取ります。

風速5m/sを超えると、このライン管理が崩れます。

PEラインは細くて軽いので風に煽られやすく、テンションフォール中にラインが膨らんでエギの姿勢が崩れる。アタリが出ても風でラインが揺れているのかイカが触っているのか分からない。フォールの管理ができないエギングは、シャクっているだけの作業になります。

5m/sで「ちょっと厳しいな」と感じ始めて、7m/sだと「これは釣りになっていない」と思います。


風速ごとの体感を整理する

わたしと先輩の体感を、風速ごとに整理します。あくまで個人の感覚です。

0〜3m/s:釣りが一番楽しい風速

ほぼ無風〜そよ風。何の釣りでも快適に成立します。ラインの糸ふけも出にくく、アタリも明確で、仕掛けの操作がやりやすい。「今日は当たりの日だ」と感じる風速です。投げ釣りは狙ったところに飛ぶし、エギングはフォールが思い通りに決まる。釣りが一番楽しいのはこの風速帯です。

4〜5m/s:工夫次第でまだ楽しめる

風を感じ始める。髪がなびく、帽子が飛びそうになる。

投げ釣りはまだ快適。オモリが重いので風に負けません。追い風なら飛距離が伸びて気持ちいいくらいです。ただし向かい風だと飛距離が落ちます。

エギングは工夫が必要だけど釣りとしては成立します。ラインが風に取られ始めるので、竿先を下げてラインを水面に近づける、エギをワンサイズ重くする(ノーマル→ディープタイプ)、風裏のポイントを選ぶ——こういった調整をすれば楽しめます。

サビキは快適そのもの。仕掛けの重さがあるので風の影響は小さく、やりやすさはほぼ変わりません。

6〜7m/s:楽しめる釣りと成立しない釣りが分かれる

砂が舞い始め、軽い荷物が飛ぶ。ビニール袋を置いていたら海に飛んでいく。

投げ釣り(砂浜)は先輩の撤退ライン。砂嵐でリールに砂が入る。向かい風なら飛距離も大幅に落ちて、狙ったポイントに届かない。追い風なら飛距離は伸びますが、糸ふけが出てアタリが取りにくく、釣りとして成立しにくくなります。

投げ釣り(堤防)はまだ成立します。砂が飛ばないので道具へのダメージは少ない。ただし風に竿があおられてアタリの感知が難しくなり、快適とは言いがたい。

エギングはほぼ成立しません。フォール管理が不可能で、ラインが風に持っていかれて、エギがどこで何をしているか分からない。釣りというより風との格闘です。わたしはこの風速ならエギングをやめて、サビキに切り替えるか帰ります。

サビキは風裏なら楽しめます。風表だと仕掛けが流されておまつりの原因になるので、やりやすい場所を選んでください。

穴釣りはこの風速でも快適に成立します。消波ブロックの隙間に落とすだけなので、風の影響をほとんど受けません。風が強い日にあえて穴釣りを選ぶのは賢い判断です。ただし波が高くなっていないか確認は必要です。

8m/s以上:楽しい釣りはほぼ不可能

体が風に押される。竿を持っているだけで疲れる。帽子は飛ぶ。波も上がってくる。

重いオモリを使った投げ釣りやカゴ釣りは、腕力と根性があればできなくはないですが、「楽しいか?」と聞かれると首を傾げます。アタリが風の振動に紛れて分からないので、釣りとして成立しているかどうかも怪しい。

10m/sを超えたら、どんな釣りでも「今日じゃなくていい。次の凪の日の方が楽しい」と判断していいと思います。


釣りの種類別「快適に成立する風速」早見表

釣りの種類 快適 工夫すれば成立 厳しい 成立しない
投げ釣り(砂浜) 〜5m/s 5〜6m/s 7m/s〜 9m/s〜
投げ釣り(堤防) 〜5m/s 6〜7m/s 8m/s〜 10m/s〜
エギング 〜4m/s 5〜6m/s 7m/s〜 8m/s〜
サビキ釣り 〜6m/s 7〜8m/s 9m/s〜 10m/s〜
ウキ釣り 〜4m/s 5〜6m/s 7m/s〜 8m/s〜
穴釣り 〜8m/s 9〜10m/s

この表はわたしと先輩の体感をもとにした目安です。場所(風裏かどうか)、風向き(追い風か向かい風か)、使っているラインの太さで変わります。


予報の風速と現場の風速は違う

天気予報の風速は「平均風速」です。実際の海辺では瞬間的にその1.5〜2倍の風が吹きます。予報で5m/sなら、瞬間的に7〜10m/sの突風が来る可能性があります。

「予報では5m/sだったのに、現場に着いたら全然違う」——これはよくあることです。予報を見て「行ける」と判断して出発しても、現場で「これは無理だ」と判断する場面は普通にあります。


現場での撤退ライン

家で予報を見て判断するラインとは別に、現場で「もう帰ろう」と判断するラインがあります。

帽子が飛ぶ。帽子が飛ばされそうになったら、それは体感で6〜7m/sです。帽子を押さえながら釣りをしている自分に気づいたら、撤退のサインです。

砂が顔に当たる(砂浜)。先輩の撤退サイン。砂が顔に当たり始めたらリールに砂が入っている可能性が高い。

ラインが管理できない。フォール中にラインが風で大きく膨らんで、エギやウキがどこにあるか分からない。これは「釣りとして成立していない」状態です。

竿を置いても倒れる。竿立てに立てた竿が風で倒れたら、もう帰りましょう。

荷物が飛ぶ。ビニール袋、エサの袋、仕掛けのパッケージ——軽いものが飛び始めたら、海にゴミを飛ばさないうちに片付けてください。


風が強い日の代替案

予報を見て「今日は風が強い」と分かった場合、家にいる以外の選択肢もあります。

風裏のポイントを探す。北風が強い日は南向きの堤防、東風なら西向き。地形が風を遮ってくれるポイントは、同じ風速でも体感が全然違います。山に囲まれた港や、建物の裏側が狙い目です。風裏を見つけたら「こんなに快適なの?」と驚くくらい釣りやすくなります。

風に強い釣りに切り替える。エギングからサビキへ、ちょい投げから穴釣りへ。仕掛けが重い釣り、キャストしない釣りは風に強いです。「風の日の穴釣り」は意外と楽しいし、ちゃんと釣果も出ます。

時間帯をずらす。風は朝凪・夕凪のタイミングで弱まることがあります。予報で昼に7m/sでも、朝5時は3m/sということは珍しくありません。早起きするだけで快適な釣りが成立することがあります。


葵ちゃん

葵ちゃんのまとめ

わたしの撤退ラインは「フォールが管理できなくなったとき」です。数字で言えばエギングで5m/sを超えたら迷い始めて、7m/sで帰ります。先輩は砂浜の投げ釣りで7m/sが諦めライン。リールに砂が入るのが嫌だと。

「何メートルでやめるか」に正解はありません。釣りの種類、場所、風向き、使っている道具で変わります。ただ共通して言えるのは、「楽しくないなら帰っていい」ということです。

風が強い中で無理に粘って、ラインが絡まって、帽子が飛んで、砂が顔に当たって、アタリも分からない——それは釣りではなくて修行です。わたしは修行をしたくて海に来ているわけではないので、楽しくなくなったら帰ります。

帰る判断は恥ずかしいことではありません。次の凪の日に気持ちよく釣りをした方が、楽しいし釣れます。


本記事はスタッフの個人的な体感に基づいた内容です。風速の影響は釣りの種類・場所・地形・風向きによって異なります。安全に関わる判断は消波ブロックの安全記事、うねりと一発大波の記事もあわせてご確認ください。