消波ブロックの周りで釣りをするということ|乗らなくても釣れます

この記事だけは真面目に書きます

普段は生意気なことを言っているわたしですが、この記事だけは真面目に書かせてください。

消波ブロック——釣り人がよく「テトラ」と呼んでいるあの構造物の周りでの釣りは、毎年事故が起きています。海上保安庁の統計では、釣り中の事故のうち約7割が海中転落で、消波ブロックからの滑落はその主因のひとつです。転落した場合の死亡・行方不明率は約50%。2人に1人が助からないという数字です。

それでも消波ブロックの周りに魚がいることは事実で、根魚の穴釣りや際釣りのポイントとして人気があるのも理解しています。

この記事は「消波ブロックに近づくな」ではなく、「消波ブロック周辺で釣りをするなら、これだけは守ってほしい」という話です。


なぜ消波ブロックが危険なのか

そもそも人が乗る前提で作られていません

消波ブロックは波の力を分散・吸収するための構造物です。人が歩くことを想定した設計ではありません。表面は平らではなく、傾斜があり、角度が一定ではありません。

滑ります

乾いていても滑ることがあります。海藻・苔・貝殻・水しぶき——これらが表面に付着すると、見た目以上に滑りやすくなります。雨上がりや波をかぶった後は特に危険です。

フェルトスパイクシューズを履いても、濡れた消波ブロックの上では完全には防げません。「滑り止めを履いているから大丈夫」という過信が一番怖いです。

隙間に落ちたら自力で出られません

消波ブロックの隙間は人間の体が入る大きさがあります。落ちると体が挟まり、自力で這い上がることはほぼ不可能です。潮が上がってきたら水没します。携帯電話を取り出す余裕もないかもしれません。

隙間の中は暗く、周囲から見えにくいため、落ちたことに誰も気づかない可能性があります。

波は予測できません

消波ブロック周辺は波の動きが複雑です。穏やかに見えていても、数分に一度だけ大きな波が来ることがあります。背後から被ることもあります。波に足をすくわれて転落する事故は、「今日は穏やかだから大丈夫」と判断した日に起きています。

もうひとつ見落とされがちなのが「引き波(航走波)」です。大型船やプレジャーボートが通過した後に発生する波で、船が通り過ぎてから数十秒〜1分遅れて押し寄せてきます。普段の波とリズムが全く違うため予測が難しく、思ったより速くて高い。消波ブロックの上にいると逃げ場がなく、一気に被ります。

先輩が消波ブロックに座って釣りをしていたとき、引き波に被ってびしょ濡れになり、道具も全損したことがあります。港湾部や航路の近くでは、自然の波だけでなく船の通過にも注意が必要です。


守ってほしいこと

ライフジャケット:着けてください

これは消波ブロックに限らず全ての釣り場で言えることですが、消波ブロック周辺では特に着けてください。

転落した場合、ライフジャケットがあれば浮くことができます。意識を失っていても浮いていれば発見される可能性が上がります。

消波ブロック周辺では牡蠣殻が付着していることが多く、膨張式のライフジャケットは穴が開くリスクがあります。固形式(フォーム素材)のライフジャケットかゲームベストの方が確実です。

消波ブロックの上に乗らない

堤防からギリギリ届く範囲で釣りをしてください。その範囲で十分に釣りになります。

「あの隙間に入れたい」「もう少し先に行けば届く」——その一歩が事故の入口です。釣果のために命を賭ける必要はありません。

乗るなら、最低限の条件を守る

それでも消波ブロックに乗って釣りをする方に対して、止める権限はわたしにはありません。ただし以下の条件を全て満たしてから判断してください。

固形式ライフジャケットを着用していること。滑り止め付きの靴(フェルトスパイク等)を履いていること。単独ではなく複数人で行動していること。明るい時間帯であること。波が穏やかで、これから上がる予報がないこと。携帯電話を防水ケースに入れて体に付けていること。消波ブロックの形状と状態を事前に確認していること。

ひとつでも欠けているなら、乗らない判断をしてください。

夜は乗らないでください

夜間の消波ブロックは、ヘッドライトを持っていても足元の確認が不十分になります。昼間に歩けた場所でも、暗い中では距離感や角度が分からなくなります。夜の消波ブロックでの釣りは、リスクが昼間の何倍にもなります。

子どもを連れて乗らないでください

子どもの判断力と運動能力では、消波ブロックの不安定な足場に対応できません。子連れの場合は堤防や海釣り施設など、柵や安全設備がある場所を選んでください。


消波ブロックに乗らなくても釣れます

穴釣りの場合、堤防から消波ブロックの隙間に向かってブラクリを落とすだけで釣りが成立します。消波ブロックの上に立つ必要はありません。竿の長さで届く範囲の隙間は、堤防の上からでも攻めることができます。

際釣り(ヘチ釣り)も同様です。消波ブロックの際にいる魚は、堤防の上から仕掛けを落としても狙えます。

「消波ブロックの上に乗らないと釣れない魚」は、そもそもいません。ポイントが遠いなら、竿を少し長くするか、場所を変える方が合理的です。


落ちたときのために

万が一に備えて知っておいてほしいことがあります。

落ちたらまず浮いてください。ライフジャケットを着けていれば自然に浮きます。着けていない場合は仰向けになって手足を広げて浮力を確保してください。

叫んでください。近くに人がいれば声で気づいてもらえる可能性があります。

無理に登ろうとしないでください。消波ブロックの表面は濡れていて滑ります。体力を消耗するだけです。浮いた状態で救助を待つ方が生存率が上がります。

釣行前に、行き先と帰宅予定時間を誰かに伝えておいてください。連絡が途絶えた場合に、捜索が早く始まります。


靴の選び方

消波ブロック周辺に限らず、海釣りの靴選びは安全に直結します。

サンダルは論外です。ビーチサンダルやクロックスで消波ブロックの近くに行かないでください。

スニーカーは堤防なら十分ですが、消波ブロック周辺では心もとないです。

フェルトスパイクシューズは消波ブロック上を歩く場合に最もグリップが効きますが、完全ではありません。過信しないでください。

磯靴(スパイクシューズ)は岩場に強いですが、コンクリート面ではスパイクが滑ることがあります。

靴は「これを履いていれば安全」ではなく、「リスクを少し下げるもの」という認識でいてください。


葵ちゃん

葵ちゃんのまとめ

わたしは消波ブロックの上に乗って釣りをしません。怖いからです。

堤防の上から届く範囲で穴釣りをすれば、カサゴもメバルも釣れます。もう少し先に行けば釣れるかもしれないという気持ちは分かりますが、その「もう少し」が事故の入口です。

転落した場合の死亡率が約50%という数字は、わたしが釣具店で安全の話をするときに必ず伝えています。「2人に1人」と言うと、みんなちょっと表情が変わります。

消波ブロックの周りには魚がいます。それは事実です。でもその魚を釣るために消波ブロックの上に乗る必要はありません。堤防からでも釣れます。場所を変えれば済む話です。

釣りは「ちゃんと帰ること」まで含めて釣りです。

はじめての堤防釣り →


海上保安庁は釣りの際のライフジャケット着用を推奨しています。消波ブロック周辺での事故に関する統計は海上保安庁の公開資料に基づいています。本記事は安全啓発を目的としたものであり、消波ブロックへの立入りを推奨するものではありません。