リール用オイル・グリス・シリコンの場所別使い分け|釣具メンテナンスの油を間違えると壊れます
え?5-56はダメなの?
ダメです。
釣具店にいると、「リールに5-56(CRC556)を吹いたら最初はよかったのに、今はゴリゴリします」という相談をよく受けます。5-56を吹いた直後は確かに動きがよくなるので、効いていると思いがちです。でも数日後にゴリゴリになる。
これは5-56のせいではなく、5-56を使う場所を間違えているからです。
釣具のメンテナンスには4種類の油があって、それぞれ役割と使う場所が違います。全部「油」だからといって使い回すと、リールが壊れます。
4種類の油の正体
オイル(リール専用オイル)
粘度が低い液体。隙間に浸透しやすく、精密に高速回転する部品の潤滑に向いています。
- 向いている場所:ラインローラー、ベアリング(スプール支持部)、ハンドルノブ軸、ベール接合部
- 注油量:1〜2滴で十分。多すぎるとラインや手を汚す
- 頻度:毎釣行後が理想。特にラインローラーは塩水が付着しやすいので毎回
グリス(リール専用グリス)
粘度が高い固体に近い油。一度塗ると長持ちし、強い負荷がかかる部品の保護に向いています。
- 向いている場所:メインギア、ピニオンギア、ウォームシャフト(内部ギア全般)
- 注意:ベアリングにグリスを塗ると回転抵抗が増えて巻き心地が重くなる。ベアリングにはオイルを使う
シリコンスプレー
樹脂・ゴム・金属すべてに使えるスプレー。潤滑力はオイルより弱いが、素材を選ばないのが強み。
- 向いている場所:竿の継ぎ目(固着防止)、ガイドリング周辺、竿尻のキャップ
- PEラインへの使用:ラインコーティング効果があり、ライントラブル軽減・耐久性向上に有効。釣り専用品が理想だが、無溶剤タイプのホームセンター品で代用できる
- ナイロン・フロロへの使用:釣り用か無溶剤タイプを選ぶのが無難
防錆浸透剤(5-56・ラスペネ等)
これは潤滑油ではありません。「固着した金属を溶かして外す」「錆を落とす」ための薬剤です。
- 本来の用途:錆びたボルト・固着した金属部品の解放
- 潤滑効果:一時的にあるが、すぐ揮発する
- 問題点:揮発するとき、既存のグリスやオイルを一緒に流してしまう
「5-56を吹いたら最初はよかった」は、浸透剤が一時的に動きをよくしているだけ。その後ゴリゴリになるのは、グリスが溶け出してギアが金属同士で直接擦れているからです。
絶対に油を入れてはいけない場所
リールには油と相性の悪い場所や、油を入れると逆に壊れる場所があります。「とりあえず全体に吹いておく」は最悪の手入れです。
①ドラグワッシャー
ドラグはフェルト素材のワッシャーが摩擦でラインを送り出す仕組みです。油が染み込むと摩擦力が激減して、ドラグがほぼ効かない状態になります。魚が掛かってもラインが出続ける。
ドラグワッシャーには専用のドラググリスを使う場所があります(ワッシャー上下の金属プレート側)が、フェルト面には何も塗ってはいけません。水でさえ影響が出るほど繊細な部位です。
②本体底面の水抜き穴
スピニングリールの底面に小さな穴があります。これはリール内部に入った水を抜くための穴で、オイルを入れる穴ではありません。
「回転が悪いな」と思ってここにスプレーを吹く人がいますが、内部のグリスを溶かして逆効果になります。リールの底面の穴は何も入れないでください。
③洗浄時のスプール内部への水の侵入
油の話からはずれますが、同じくらい重要なので書いておきます。
釣行後の水洗い時にスプールを外すと、ドラグ内部に水が入ります。スプールは装着したままドラグを締め込んだ状態で洗浄してください。ドラグワッシャーは水でも影響が出る繊細な部位です。
日常メンテナンスで触れる場所まとめ
分解なしで釣行後にできる範囲を整理します。
| 場所 | 使う油 | 頻度 |
|---|---|---|
| ラインローラー | リール専用オイル 1〜2滴 | 毎釣行後 |
| ハンドルノブ軸 | リール専用オイル 1〜2滴 | 数釣行に1回 |
| ベール接合部 | リール専用オイル | 数釣行に1回 |
| 竿の継ぎ目 | シリコンスプレー | 釣行前後 |
| PEライン | シリコンスプレー(無溶剤タイプ) | 釣行前 |
内部ギアやベアリングのグリスアップは分解が必要なので、定期的に釣具店のオーバーホールに出すのが正解です。
油の選び方
釣り専用品を使う理由
シマノ・ダイワ・メジャークラフトなど各社が純正オイル・グリスを販売しています。自社のリールに最適な粘度・成分で設計されているので、対応リールには純正品が一番安心です。
ホームセンター品で代用できる範囲
- シリコンスプレー(竿・ライン用途):無溶剤タイプなら代用可能
- 機械油:釣具への代用はおすすめしない
- 5-56系の防錆浸透剤:釣具への使用は原則しない
余談ですが、先輩は家のドアの蝶番のきしみにダイワのリールグリスを使っているそうです。蝶番は金属同士の摩擦がかかる部位なので、グリスの用途としては理にかなっています。釣り以外での使い道に困ったときに。
5-56を吹いてしまった場合の対処
すでに吹いてしまった場合は、パーツクリーナーで油分を落とし切ってから正しい油でグリスアップし直すことになります。
パーツクリーナーは直接吹きかけず、綿棒にしみこませてから拭き取るのが基本です。直接吹きかけると樹脂パーツにダメージを与える可能性があります。
ただし内部ギアやベアリングまで5-56が届いている場合、完全に除去するには分解が必要になります。「ゴリゴリ感が出てきた」「巻き心地が戻らない」という状態なら、素直にオーバーホールに出すのが現実的な選択です。精密化が進む現代のリールは、素人の分解はリスクが高いです。

葵ちゃんのまとめ
本記事のリールメンテナンス情報は、シマノ公式・Honda釣り倶楽部・TSURINEWS・各リールメンテナンス専門サービスの情報を参考にしています。リールの機種によって適切な油の種類が異なる場合があります。詳細は各メーカーの公式マニュアルをご確認ください。
「油だからどれでも同じ」は釣具メンテナンスでは通用しません。
油を入れてはいけない場所が3か所あります。ドラグワッシャー・底面の水抜き穴・洗浄時のスプール内部。ここを間違えるとリールが壊れます。
使い分けを覚えるだけで、リールの寿命はかなり変わります。