釣り場が減り続けている理由|SOLAS条約と、釣り禁止になる本当の原因

「昔はここで釣れたのに」の背景には、複数の事情があります

堤防や岸壁に行くと、フェンスが張られて立入禁止になっている場所をよく見かけます。
「マナーが悪い釣り人のせいだ」と言われることも多いですが、
実は釣り場が失われる原因はひとつではありません。

国際条約、法律、管理者の判断、釣り人のマナー——
これらが複合的に絡み合って、釣り場は少しずつ失われています。

今回は釣り人として知っておくべき「釣り禁止・立入禁止の本当の理由」を整理します。


① SOLAS条約による立入禁止

タイタニック号から始まり、9.11で変わった

SOLAS(ソーラス)条約は、正式名称を「海上における人命の安全のための国際条約」といいます。
1912年のタイタニック号沈没事故を契機に締結された歴史ある国際条約で、日本は1980年に加入しています。

釣り場に大きな影響を与えたのは、2001年の米国同時多発テロ事件を受けた2002年の条約改正です。
テロ対策として港湾施設の保安体制強化が国際的に義務付けられ、
日本では「国際航海船舶及び国際港湾施設の保安の確保等に関する法律(国際船舶・港湾保安法)」が2004年7月1日に施行されました。

日本で100か所以上の釣り場が失われた

この改正により、500トン以上の貨物船や旅客船が停泊する全国の重要港湾・特定重要港湾(24港)を中心に、
フェンスや柵が設置され、一般人の立入りが禁止されました。
公益財団法人日本釣振興会によれば、この結果日本では100か所以上の港湾施設が柵で囲われ、多くの釣り場が失われました。

横浜・東京・川崎・大阪・神戸・名古屋などの大型港湾がその対象で、
かつてファミリーフィッシングの場として親しまれていた埠頭・岸壁の多くが立入禁止区域となっています。

SOLAS制限区域に入ると「普通の不法侵入」より重い罰則

SOLAS条約の指定区域への侵入は、通常の不法侵入以上に厳しい罰則規定が設けられています。
立ち入った釣り人だけでなく、立ち入らせた側(管理者)も処罰される場合があります。

フェンスに穴を開けて入ったり、乗り越えたりするのは論外ですが、
「釣りができそうなのに柵がある」場所はSOLAS制限区域の可能性があります。
見た目で判断せず、現地の掲示を必ず確認してください。

国際条約なので、「釣り人の事情」では覆せない

全日本釣り団体協議会や日本釣振興会も、条約対象港の開放に向けて行政に働きかけをしてきましたが、
国際条約ということもあり、原則として開放は難しい状況です。
一部では静岡県清水港の日の出岸壁のように、行政との交渉で釣りのため定期的に一時開放される場所もありますが、
例外的な取り組みです。


② 漁港法・港湾法による管理者の権限

漁港は「漁師の仕事場」であり、釣りは本来おまけ

全国に約2,900か所ある漁港は、漁港漁場整備法に基づき漁業活動のために整備された行政財産です。
「税金で作られた施設なのだから釣り人にも使う権利がある」という声を聞くことがありますが、
これは正確ではありません。漁港はあくまで漁業者のために整備された施設であり、
釣りなどの利用は「漁業活動を妨げない限りにおいて許可できる」という位置づけです。

釣りができる漁港の多くは、漁協や漁業者が好意で開放しているのが実態です。

港湾法でも同様

港湾の防波堤・岸壁は港湾法に基づく行政財産で、
港湾管理者(都道府県・市町村)が利用可否を判断します。
釣りを許可するかどうかは管理者の裁量であり、
「釣り人のために開放する義務」は法律上ありません。


③ マナー・事故が招く立入禁止

釣り人自身の行動が釣り場を失わせている

公益財団法人日本釣振興会は、SOLAS条約以外の立入禁止の原因として以下を挙げています。

ゴミの放置:釣り人によるゴミが漁業者や地元住民に迷惑をかけ、立入禁止のきっかけになる最も多い原因のひとつです。

違法駐車:漁港内・周辺道路への違法駐車が漁業者の作業を妨げ、トラブルの原因になっています。

漁業者とのトラブル:釣り糸が漁船のスクリューに絡まる、停泊中の船に無断乗船するなどのトラブルが、漁港全体の釣り禁止につながるケースがあります。

釣り人による死亡事故:波の高い日や夜間の事故によって、管理責任の問題から立入禁止になるケースが全国で発生しています。


④ 安全管理上の理由

防波堤の先端・テトラ帯・老朽化した岸壁などは、釣り人の安全のために立入禁止にされる場合があります。
「釣れそうなのに禁止になっている」場所には、足場が悪い・波をかぶりやすい・構造物が老朽化しているなど、
管理者が把握している危険がある場合がほとんどです。


釣り場を守るために、釣り人ができること

釣り場が失われる原因を整理すると、SOLAS条約のように釣り人の努力ではどうにもならないものと、
釣り人の行動次第で変えられるものに分かれます。

どうにもならないもの
SOLAS条約による立入制限は国際条約に基づくものであり、個人の行動で覆せるものではありません。
フェンスが張られた場所はフェンスの外から釣りをするか、別の釣り場を選ぶしかありません。

釣り人の行動で変えられるもの
ゴミを持ち帰る、違法駐車をしない、漁業者の作業を妨げない、危険な場所に入らない——
これらは釣り人一人ひとりの行動で変えられます。
現在開放されている釣り場が今後も使えるかどうかは、
釣り人全体のマナーにかかっています。


店長の結論

「釣り禁止」には理由があります。その理由を知ってほしい

釣りをしていると「なぜここが禁止なのか」と思う場面があります。
その理由がSOLAS条約なのか、管理者の判断なのか、マナーの問題なのかによって、
釣り人として取れる行動が変わります。

Tsuricastでは各スポットの立入禁止情報・注意事項を随時更新しています。
訪問前にTsuricastの釣り場情報を確認し、
禁止区域への立入りは絶対に避けてください。


本記事の情報は執筆時点のものです。各港湾・漁港のSOLAS制限区域・立入禁止情報は随時変更されます。現地の掲示および各港湾管理者の情報を必ずご確認ください。本記事は法律の解釈を提供するものではありません。